実録 亞細亞とキネマと旅鴉

サイトやFlickrの更新情報、映画や本の感想(ネタばれあり)、日記(Twitter/Instagramまとめ)などを書いています。

『永遠の夏(盛夏光年)』(陳正道)[C2006-17]

今日も昼ごはんはセガフレードのパニーニ。そのあと電車で渋谷へ移動する。今日の二本目、映画祭十七本目は、やはりアジアの風の『永遠の夏』(公式ブログ)。2年前の東京国際映画祭で『狂放』が上映された陳正道(レスト・チェン)監督の新作で、今回楽しみにしていた映画のひとつ。『狂放』についてはほとんどいい評判を聞かないが、私はけっこう好き。暗く重苦しい空気が忘れられない。『狂放』のあとには“宅變”を撮っているが、ホラーなのでまさか陳正道だとは思わず、ノーチェックだった。公開されるという噂だったのにどうやらDVD発売のみのようで残念。観ていないホラーのDVDなんて買いたくないのだけれど、やっぱり買うんだろうな…。

映画は、國小(小学校)時代からの親友である正行(張睿家(ブライアン・チャン))と守恆(張孝全(ジョセフ・チャン))と、高中(高校)で二人と知り合う慧嘉(楊淇(ケイト・ヨン))の三人が、友情と愛情のあいだで揺れ動くさまを描いたもの。もともと正行が守恆と友だちになったのは先生に頼まれたからであり、先生の頼みをきいたことで正行は何を得たのか、というのがテーマだと思う。張睿家と張孝全が、対照的な二人を印象深く演じている。張睿家は初めて見るが、ちょっと范植偉(ファン・チィウェイ)っぽい雰囲気。張孝全は“[薛/子]子”に出ているらしいが、私はまだ一話半しか見ていないのでやはり初見。楊淇は『20.30.40の恋』(asin:B000AOXE9U)に出ていた女の子。

主要な登場人物をこの三人だけに絞っているのがよかったと思う。正行と守恆の間に初めて、そして唯一入り込んできたのが慧嘉であり、それをきっかけに二人の関係は揺らぎ始める。さらに大学進学によってそれぞれの道を歩き始めると、三人の関係はさらに変化していく。家族やほかの友人や学校や世間といったものは、彼らの関係に直接的な影響を及ぼすことはない。映画は正行と守恆が心情を吐露しあい、二人の友情が始まった原点に回帰するところで終わる。それまで単細胞っぽかった守恆が、心の内を叫ぶのが切ない。この映画に結論はない。もちろん後日談もない。ぜひ一般公開してほしい映画である。

『狂放』ほど重苦しくはないが、ブルーを基調とした映像が、青春の重苦しさみたいなものをよく表現している。前半の舞台は花蓮で、東海岸の海は、美しいけれどもどこか寂しく感じられる。ロケ地は違うようだが、高中の舞台は花蓮高中。花蓮は移動途中にちょっと寄ったことしかないので、次はちゃんと訪ねたい。

ところで、守恆が慧嘉に「つき合おう」と言ったら慧嘉が「大学に受かったらね」と言うシーン。「『童年往事』(asin:B000J4OZPS)だ」と叫んだのは私だけではあるまい。また、『20.30.40の恋』のエントリー(id:xiaogang:20060121#p1)で地震が出てくる台湾映画にふれているが、この映画にも九二一集集大地震と思われる地震が出てくる。