実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳(精武風雲・陳真)』(劉偉強)[C2010-64]

新宿武蔵野館で、劉偉強(アンドリュー・ラウ)監督の『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』(公式)を観る。『ドラゴン怒りの鉄拳』[C1972-18]のリメイクだと思いこんで観に行ったら、リメイクではなく続篇だった。

『ドラゴン怒りの鉄拳』ではもちろん李小龍(ブルース・リー)が演じていた陳真を演じるのは甄子丹(ドニー・イェン)。今回は、苦力のような格好から白い詰襟まで、あらゆる衣装をとっかえひっかえしてくれるが、特にナイトクラブでの洋服姿にしびれた。クラシカルな顔立ちなので、中国服よりも洋装のほうが時代の雰囲気が出るし、髭の似合う大人の男という感じでとてもよかった。ピアノも弾いたりして大サービス(フランスで奴隷のように働かされたのに、あそこで『ラ・マルセイエーズ』を弾くというのはどうかと思う)。アクションシーンももちろん見せ場がいっぱいだが、グリーン・ホーネットもどきのコスプレと、やたら助走しているみたいなアクションにはあまり萌えなかった。

舞台は1925年の上海。魔都上海ものは、たとえフィクションの荒唐無稽なお話であろうとも、時代の雰囲気をいかに出すかが重要なポイントである。この映画には、黃金榮を思われる黃秋生(アンソニー・ウォン)とか、張學良を思わせる余文樂(ショーン・ユー)とか、李香蘭川島芳子を足してアレンジしたような舒淇(スー・チー/シュー・チー*)とかが登場するが、いかにもいいかげんそうな時代考証といかにもなセット撮影で、魔都の空気は全く感じられず、テーマパークか学芸会のようである。

舒淇は日本人という設定なのに、日本語がひどすぎる。あの程度しかできないのなら、無理に日本語の台詞を入れることはない。それに彼女は、中華系女優のなかでは特に日本人に見えない度が高いので、このキャスティングは疑問である。ただの歌姫ではないということで彼女を起用したのかもしれないが、そのわりには見せ場がいまひとつで、「また舒淇かよ」感のほうが勝っていたと思う。

ところで、この映画にはAKIRAという人は出ていたが、さすがに小池朝雄は出ていなかった。AKIRAという人には「映画に出たかったら、髪の毛を切ってはどうですか」と言いたい(雰囲気ぶちこわしの何割かはこの人が担っていたと思う)。