実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『恋の紫煙(志明與春嬌)』(彭浩翔)[C2010-19]

東京国際映画祭15本めは、同じく六本木ヒルズで彭浩翔(パン・ホーチョン)監督の『恋の紫煙』(TIFF紹介ページ)。アジアの風・アジア中東パノラマの一本。

研究開発の現場には、新しいアイデアはタバコ部屋で生まれるという神話があるが、これは恋が生まれるというお話。社内のタバコ部屋では恋はなかなか生まれないかもしれないが、香港では2007年に室内での喫煙が禁止されたということで、喫煙所は屋外にあり、周辺のいろんな会社の人が訪れて交流が生まれるということらしい。わたしが働いていた会社でも、タバコ部屋からもれる煙が問題とかで、屋内のタバコ部屋がどんどんなくなっていたので、今ごろ屋外でこのようなことが起きているかもしれない。

というわけで、屋外の喫煙スペースで知り合った志明(余文樂ショーン・ユー)と春嬌(楊千嬅/ミリアム・ヨン)が、お互いを意識しだしてから恋愛に発展するまでをコメディタッチで描いたかわいらしい小品。特別ドラマチックだったりロマンチックだったりするわけではない、ごくふつうのありふれた恋愛を、きれいなところだけ描くのでもなく、すごく日常的な感覚で軽妙に切り取っているのがいい。もちろん彭浩翔監督なので、エスプリの効いた会話、ではなくて下ネタの効いた会話が交される。でもそんなお下劣なところも含めてリアリティがある。

話している内容を再現ドラマで提示していて、冒頭いきなり怖い話の再現ドラマで始まるので、一瞬「え?これ何の映画?」と思ってしまった。再現ドラマでは、志明の前の彼女の話がすごく笑えた。金髪はともかく、いかにもありそうだ。いかにもありそうで、かなり笑えて、でも本人にとってはかなり深刻な事態だというところが絶妙。こういう、思いついてもくだらなすぎて誰も映画にしないことを拾うのがうまい。

余文樂は香港の若手俳優の中でいちばん好きだが、なかなか好演していた。楊千嬅は映画で見るのはたぶんはじめてだが、顔がちょっとおばさんくさいのがイヤだ。

監督インタビューはこちら(LINK)。