実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『こんにちは赤ちゃん』(井田探)[C1964-36]

かたつむりで広島風お好み焼きを食べて、午後から出京。ラピュタ阿佐ヶ谷(公式)の特集はまだ「歌謡曲黄金時代 1960's」で、今日は『こんにちは赤ちゃん』を観る。わたしはこの曲が嫌いなので(だって赤ちゃんが嫌いだから…)あまり乗り気ではないが、いづみさまモノということでJ先生のつきあい。目当ては、もれなくセットの山猫軒のディナーである。

映画は、ある船の船員たちの横浜での24時間の休暇を、父親に顔を見せるために連れて来られた川地民夫の赤ちゃんと、今まさに生まれようとしている桂小金治の赤ちゃんを中心に描いたドタバタ人情喜劇。これに、主演の和泉雅子山内賢と、川地民夫芦川いづみの二組のカップルの恋愛問題が絡む。

川地民夫芦川いづみは、障害があってなかなか結婚できないすれ違いカップルで、川地民夫の妻の、ふみやこと小園蓉子を加えた三角関係の部分だけシリアス。なので芦川いづみの役柄はいたって真面目で、いづみさまらしさはほとんどない。川地民夫の子供を連れて面会に行くという、ほとんどおしかけ女房のような厚かましさは、いづみさまらしいと言えば言える(「お母さまはお忙しいのでわたくしが代わりに」とかなんとか言っていたが、本当かどうかわかったもんじゃない)。

コメディとはいえ、ギャグはさむすぎてほとんど笑えない。観ていて不愉快だとか、すごく退屈だとかいうことはないが、観ても観なくてもいいというか、もっといえばあってもなくてもいいような映画。ただ、親(特に母親)は子供のために自分の恋愛ややりたいことはがまんすべきという論調の映画やドラマが21世紀においてさえ多いのに、この映画ではそういう結論になっていないところは好感がもてる。

主題歌はもちろん『こんにちは赤ちゃん』だが、梓みちよバージョンではなく、出演者がみんなで歌ったりしていた。また協賛が森永乳業で、突然森永ドライミルク缶が出てくるところなど、露骨すぎて楽しかった。