実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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会津旅行往路:鎌倉→塔のへつり→会津芦ノ牧温泉

今日はJ先生が毎年恒例の休日なので、わたしも例年同様有給休暇を取って温泉へ行く。今回の行き先は、『女の中にいる他人』に出てくる会津芦ノ牧温泉。

会津はたいへん遠いので、6時には出発しないといけないとJ先生は言う。平日と同じ時間に起きるが、なんだかんだで6時出発とはいかず、6時40分ごろ家を出る。朝比奈ICからいきなり高速に乗り、横浜横須賀道路→首都高速湾岸線→中央環状線→川口線と走って、川口JCTから東北自動車道に入る。早朝だし、鬼門の国道134号も通らないので、ここまでたったの1時間ちょっと。鎌倉で少し降っていた雨は、このあたりまで来ると降っていない。東北道では3回休憩し、須賀川ICまで約3時間。そこから西へ国道118号→国道121号と走り、最初の目的地、塔のへつりへ向かう。途中で道を間違えて白河に戻りそうになったが、12時半ごろにはどうにか塔のへつり附近までやって来た。
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まずは通りがかりの蕎麦屋、五晃苑で昼ごはん。蕎麦のほか、岩魚の塩焼揚げ(↓左写真)とこんにゃくも頼む。岩魚の塩焼揚げは、名前のとおり塩焼を揚げたもの。ただ揚げたのとどう違うのかはいまいちわからない。おいしかったが、醤油とかかかっていないほうが好き。サービスでついてきたまたたびの天ぷら(↓右写真)がいちばんうまかった。たぶん生まれてはじめてまたたびを目にして、わたしは今までマタタビとムササビの区別がついていなかったことが判明。「またたび浴びたタマ」ってこれだったんだ。


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塔のへつり(↓左写真)に来た目的は、ここにある吊橋、藤見橋(↓右写真)が『女の中にいる他人』に出てくる吊橋ではないかと思ったからだ。藤見橋は1987年竣工で、映画に出てきたものではあり得なかったが、どうやらその後継でもないらしい。映画の吊橋は、両側に旅館があるような場所。一方、ここは片側が塔のへつりだから、昔も旅館があったはずはない。


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吊橋を渡ってひととおり見物。吊橋はけっこう揺れたが、幅が広いのでJ先生でも渡れた。侵食系の自然の景観にはほとんど興味がないので、さっさと帰る。

国道121号から国道118号に入って北上するとすぐに会津芦ノ牧温泉。今回は、たな田露天というのに惹かれて、大川荘(↓左写真)というでかい旅館というか温泉ホテルに泊まる。大川と聞くと、「大川といえばだれ?」と問いたくなる。橋蔵とか平八郎とか博とか隆法とか栄策とかいろいろあるが、「やっぱ周明だよね」と言ってJ先生の頭をポンと叩く。チェックインの15時より早く着いたが、部屋に入ることができた。大きな窓の向こうに緑の山と渓谷の景色が広がっていて悪くない(↓右写真)。


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お茶もそこそこに、温泉街の散策に出かける。温泉旅館はいくつかあるが、つぶれている土産物屋もあり、けっこう寂れた雰囲気。まずは名前からして怪しい金精神社へ行く。前に車が停まっており、神社の前に座って肩を寄せあっているカップルが一組。車で乗りつけてご本尊(↓左写真)に見入っているのかと思ったら、神社の前にある足湯につかっているところだった。近くには、関西ヌード専門館、芦の牧温泉劇場(↓右写真)もあって、J先生おおよろこび。菓匠丸峰庵で黒糖まんじゅうを食べ、町はずれの大竹商店まで行ってかやの実煎餅を買う。


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次はいよいよ『女の中にいる他人』のロケ地探し。会津芦ノ牧温泉は、小林桂樹が神経衰弱を癒すという名目で訪れるところである。映画の中で小林桂樹が泊まる旅館は松風館というところだが、これはもうなかった。建っていたのは芦ノ牧橋の下のあたりだと思われるが、今は別の建物が建っている。
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小林桂樹と新珠三千代が散策する河原はこの旅館の下のほうだが、草ぼうぼうの荒れ放題で、とても散策するようなところではなかった。
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新珠三千代が願いごとをする神社はわからなかったが、近くに鳥居だけ残っている(↓左写真)ところがあった。大川荘の駐車場あたりに神社があったのではないかと思われる。


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河原のあとふたりが向かうのはトンネル。想定は芦ノ牧トンネル(↑右写真)だと思われるが、ロケ地はここではなく、昨年訪ねた奥多摩の御岳トンネルと払沢トンネル。このトンネルのシーンは芦ノ牧温泉でのクライマックスなので、ここが別の場所となると芦ノ牧温泉のロケ地としての魅力はいまひとつであるといわざるを得ない。

温泉街の中心を見ていない気がするが、お風呂のために急いで旅館に戻る。大川荘には、内湯の大浴場と、大浴場からそのまま行ける絶景露天風呂たな田と、空中露天風呂の三つのお風呂がある。売りにしているのは絶景露天風呂たな田だが、空中露天風呂は夜は貸切になってしまう。そこで、まず内湯で洗ってひととおりお風呂をすませ、たな田は後回しにして空中露天風呂につかりに行く。なぜか誰もおらず、タダで露天を独り占め。

晩ごはんは食事処だったが、いちおう個室。部屋と同様、山の眺めが美しいところだったが、食べるのに熱中しているあいだに暮れてしまった。今回J先生が予約したのは、なぜか「本格牛ステーキプラン」というもので、福島県産牛200gのステーキがつく。鮎の塩焼き(↓左写真)などがつく料理はふつうだったが、ステーキ(↓右写真)はやわらかくておいしかった。


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晩ごはんのあとは絶景露天風呂たな田へ。大きい旅館なので、金曜日とはいえけっこう泊まっているはずだが、なぜかまたも独り占め。いつも思うけれど、みんな温泉に来ているわりにお風呂に欲がないよね。絶景露天風呂たな田というのは、三つのお風呂が棚田風に段々になっているもの。とりあえず上から順に入るが、結局、いちばん外に近いいちばん下に最も長く入っていることになる。

ここらあたりに来ている行楽客は、関東からよりも東北からが多いらしい。塔のへつりでもお風呂の脱衣所でも、みんな「んだんだ」とか会話していて楽しい。夜は餅つきショーがあり、ちょっと行ってみたがつまらなそうなのですぐに退散した。

大川荘は、「また来よう」と思うような売りはないが、まあ悪くないというか、寂れつつある芦ノ牧温泉ではそれなりにがんばっている。しかし大きい旅館なので、グループや団体向けにいろいろ趣向を凝らしてはいるが、洗練とは程遠く、個人客にとってはあまり魅力がない。当然のことながら、神経衰弱を癒したり、妻に秘密を打ち明けたりするのには不似合いな旅館である。考えてみれば、今回は『女の中にいる他人』がテーマなのだから、秘密の匂いのするこじんまりした旅館にすべきであった。