実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『徳川女刑罰史』(石井輝男)[C1968-36]

遅めに出京し、ドゥ・マゴでプレートランチの昼ごはん。それから、シネマヴェーラ渋谷石井輝男監督の『徳川女刑罰史』(映画生活/goo映画)を観る。特集は「グラインドハウス A GO GO! タラちゃんとゆかいな仲間たち」で、『キル・ビル Vol.2[C2004-01]との二本立てだが、もう一度観ようという気は起こらないので『徳川女刑罰史』だけ観る。混んでいるのではと危惧していたが、全然混んでいなかったので、それはそれで心配。

映画は、異常性愛路線の一本で、内容はタイトルどおり。表の主役が吉田輝雄で、裏の主役が渡辺文雄。二人とも与力で、吉田輝雄は例によっていい人で、「こんな厳しい刑罰は間違っているのではないか」と真面目に考える。一方の渡辺文雄は、眼を輝かせて拷問や死刑執行を楽しむ。

見かけは三話オムニバスだが、微妙に繋がっている。まず第一話は、吉田輝雄と橘ますみが扮する町人の兄妹が主役で、橘ますみが近親相姦の罪で死刑になる。刑場へ向かう橘ますみのモノローグで始まって回想シーンに突入するところや、江戸時代らしくない明るい音楽がかかったりするところなど、『異常性愛記録 ハレンチ』[C1969-26]を彷彿させるが、こちらのほうが先。最後に死んだ兄とそっくりな与力、吉田輝雄(二役)が現れて、こっちの吉田輝雄(やっぱり「吉岡」らしい)が関わった事件を回想するという形で次のお話に繋がっていく仕掛け。

第二話は尼寺が舞台。尼寺で行われる拷問リンチのすごさと、常軌を逸した尼僧の犯罪のため、主題の女刑罰はほとんどどうでもいい感じ。第一話で嬉しそうに橘ますみを鞭打っていた渡辺文雄もかすみ気味。この第二話がいちばんふつうに異常性愛路線を楽しめるところ(たぶん)。

第三話になると、これまでは控えめだった渡辺文雄が堂々と前面に出るとともに、SM系彫師、小池朝雄が登場してこの二人が対決。吉田輝雄が担う、いちおう真面目な映画としての体裁は、「あんた、なにきれいごと言ってんの?」という感じだが、ここで小池朝雄が強引に勧善懲悪な展開にもっていってしまう。小池朝雄なのに悪を討つ役。いちおう白人女が拷問されているが(もはや取り調べをしているようには見えず、ただ拷問しているだけ)、女刑罰はさらにどうでもよくなっている。

これまでに観た異常性愛路線は、似たような展開が続いて途中で飽きてきたけれど、これはなかなかうまくできていて最後まで飽きさせなかった。