バンガロールに来ちゃったの

サイトやFlickrの更新情報、映画や本の感想(ネタばれあり)、日記(Twitter/Instagramまとめ)などを書いています。

『愛染かつら』(中村登)[C1962-31]

二本めは、ずっと再見したいと思っていた(id:xiaogang:20080812#p1参照)松竹リメイク版『愛染かつら』。監督は中村登、主役は岡田茉莉子吉田輝雄。スクリーンで観るのは7年ぶり。

1962年に『愛染かつら』をリメイクすることの是非は措くとしても、リメイクするならするで当時の世相や社会的事件を取り入れるなどして、1962年的な視点を打ち出してほしかったと思う。1954年の大映版『愛染かつら』[C1954-V]も、舞台を現代すなわち1954年ごろに置き換えただけで、格別1954年のできごとなどは盛り込んでいなかったが、脚本がかなり変わっていることもあり、あまり気にならなかった。ところが松竹版リメイクは、オリジナルと同じような部分がけっこうあり、時々ひっかかる。たとえば、高石かつ枝(岡田茉莉子)のこれまでの苦労話はどうも戦前的な感じだし、看護婦たちがみんなタメ口なのに、岡田茉莉子ひとりが丁寧語でしゃべるのも不思議だ。

それからもうひとつ。主題歌の『旅の夜風』は超有名なので、いくら古くさくても変えるわけにはいかない。それはわかる。しかし、高石かつ枝のデビュー曲『悲しき子守歌』はどうだろう。もっとモダンなものに変えてもよかったのではないか。だいたい「可愛いおまえがあればこそ、つらい浮世もなんのその」なんて歌詞が、いくら素人でも入選するはずがない(と思うが、この作詞は西条八十なんですね)。東宝時代にはショーでジャズを歌っていたという岡田茉莉子が、1962年にこんな戦前的な歌でデビューするなんて、あまりにも不自然である。

しかしこれらの点を除けば、ていねいに作られた映画でメロドラマを堪能できた。岡田茉莉子吉田輝雄がとてもモダンな雰囲気であり、現代性を出すのに成功している(それだけに『悲しき子守歌』が惜しまれるのだが)。特に吉田輝雄がいい。これより前の新東宝映画や、これよりあとの東映映画の吉田輝雄を知ったうえで観るとより楽しめるし、彼の魅力がよく発揮された映画であると思う。たとえば、彼が岡田茉莉子を口説く過程はかなり強引だが、その強引さも吉田輝雄だと許せるし、納得できる。また、東京駅に来なかったというだけでふたりの仲がおしまいになってしまう不思議さも、吉田輝雄が「女連れで来ると豪語したのにメンツを潰された」という演技をしていて説得力があった。

津村病院って田園調布だったのか。