『テレビが生んだ悪役スタア 天津敏』読了。
- 作者: 天都カネ子,中田雅喜,円尾敏郎
- 出版社/メーカー: ワイズ出版
- 発売日: 2005/07
- メディア: 単行本
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東映任侠映画では天津敏をかなり観ているが、彼個人についても他の仕事についても全く知らなかった。サブタイトルになっている「テレビが生んだ悪役スタア」という点についても当然知らない。巻末の長い「天津敏TV出演総目録」を見ても、知らずに見ていた可能性すらほとんどない。だから、家族・知人のインタビューは、全く知らなかった天津敏の生い立ちや経歴や性格について知ることができてなかなかおもしろかったが、テレビ関係者のインタビューはちょっと厳しかった。テレビよりも、東映任侠映画関係者のインタビューがもっとほしい。
家族・知人のインタビューで私が反応したのは、鎌倉に住んでいたというのと、扇ガ谷に家を建てる前に、古我さんという大邸宅に間借りしていたというところ。「古我さんという大邸宅」といえば、以前は時々前を通っていた洋館に違いない。「鎌倉三大洋館」だとかで(あとのふたつは鎌倉文学館と旧華頂宮邸か?)人力車もよく停まっている。東映任侠映画関係者としては、遠藤太津朗(「遠藤辰雄」のほうが馴染み深い)のインタビューがトリを飾っているのが渋い(ぜんぜん渋くないって)が、監督やスタッフのインタビューがなくて寂しい。遠藤太津朗のインタビューでは、『馬賊やくざ』のロケで1ヶ月一緒に台湾に行っていたとか、内田朝雄は下手なくせに偉そうだから二人でせせら笑っていたとかいうところがおもしろかった。ちなみにワイズ出版からは『遠藤太津朗』(ISBN:4898300286)という本も出ているようだ(どうですか?>J先生)。
ところで、この本のインタビューはかなり読みにくい。ワイズ出版の他の本でも感じることなので、もしかしたら会社の方針なのかもしれないが、あまりにもありのままに採録しすぎなのではないだろうか。インタビューの採録では、どの程度そのまま再現するかというのはたしかに難しい問題である。私も映画祭などの講演やQ&Aの採録をサイトに載せているが、書いていていつも迷う。語り口や場の雰囲気をまるごと伝えたいという気持ちもあるし、実際そういうニーズもあるだろう。でも、その場で聞いていたらあまり気にならなくても、テキストだけで伝えようとするとかなり読みにくくなる。抑揚や顔つきなどの他のモーダル情報がないのだから、当然そこは編集が必要になると思う。この本の場合、句読点の入れ方からしてものすごく読みにくいが、何かの基準に沿ってそうしているのか、単に編集の手を抜いているのかもよくわからない。