『終戦の賠償 台湾現代小説選II』読了。
- 作者: 李双沢,松永正義
- 出版社/メーカー: 研文出版
- 発売日: 1984/07
- メディア: 単行本
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2本の小説は、内容的には興味深かったが、それよりも『台湾文学を考える』がおもしろかった。まず興味をひいたのは次の文である。
我々は、成功した文学作品が、必ずその独特の個性と人類の共通性との両方を備えていることを知っている。(p. 172)
私が常々、優れた映画を判断するときの基準とまさに一致しているからだ。
この論文は、郷土文学論争のあとの「台湾文学とは何か」という議論の中で書かれたものであるが、ここで李喬が言っているのは、「まず「わたし」から出発すれば、それは「台湾文学」であり、そしてまた「中国文学」でもある」といったことである。私は議論のコンテクストを完全には理解していないし、そもそもなぜ「台湾文学とは何か」といったことを議論しなければならないのかよく理解できないが、ここで言われていることは私の実感に合っていて、共感できる。全体的に抽象的に語られているが、たとえば次のような文が、筆者の考え方を端的に表しているように思われる。
実のところ、大論戦の十数年前から、筆者はつとに、郷土文学を敵視する人々が郷土小説として非難し、一部の「郷土理論家」は郷土小説の中に含めようとしない小説を書いてきた。大論戦後も筆者は依然、一部の人々が目をそばめ、別の人々には承認されないような郷土小説を書いている。(p. 181)
李喬は『寒夜』(ISBN:4336045313)の作者であり、これはなかなか興味深い小説だった(d:id:xiaogang:20060202#p1)。(ところで「はまぞう」の検索機能はもうちょっとなんとかしてほしい。「寒夜」でも「李喬」でも『寒夜』が検索できないというのはどういうこと?)