ラピュタ阿佐ヶ谷の特集は「昭和警察物語 銀幕に吠えろ」。ここの上映時間は200Q年でも変わらないようだ。まず一本めは、『モーガン警部と謎の男』。『モーガン警部』というのは、当時テレビで人気を博していた現代西部劇らしい。その主演のジョン・ブロンフィルドと鶴田浩二が共演した東映映画。レアものなのでほぼ満員。中身はかなりの珍品。
ジョン・ブロンフィルドがしょせんはテレビの人だからか、二流の監督にいいかげんな脚本、鶴田浩二(と山本麟一)以外はぱっとしないキャスト、ニセモノのアリゾナにニセモノの香港と、かなり失礼な待遇。しかも、『モーガン警部』は保安官の制服や西部劇っぽい格好がウリだったに違いないのに、ビジネスマンに化けたスーツ姿では魅力半減ではないのか。
ホンコンフラワーに隠された麻薬の謎を追うというありきたりなストーリーながら、国際キャストの顔合わせ、アリゾナ→香港→東京というロードムービーの味わいとエキゾチックな雰囲気で、手堅くつくればそれなりの娯楽作品になったはずである。ところがこの映画、やたらと取ってつけたような展開が続いてかなり退屈である。
加えて、鶴田浩二がかっこ悪い(またか)。もしこのあとギャング映画が大流行して、任侠映画の流行がなかったら、鶴田浩二は無残に消えていたに違いない。任侠映画に感謝すべきなのは、高倉健よりもむしろ鶴田浩二だろう。
この映画の鶴田浩二は、マラッカの神風(絶句)と呼ばれる謎の男、実はただの特攻くずれという役。本人は思い入れたっぷりに演じているが、そんな設定はこのストーリーに全然あっていない。アメリカの肩をもつわけではないが、わざわざアメリカ人を呼んでおいて、特攻くずれのロマンチシズムを見せつけるという嫌がらせみたいなやり方にも驚く。
マラッカの神風、鶴田浩二とこれを追う刑事、中山昭二が実は戦友だったという設定は、『東京ギャング対香港ギャング』[C1964-21]とかなり似ている(しかもこっちが先)。しかし、丹波哲郎と中山昭二、石井輝男と関川秀雄が月とスッポンなので、再会シーンも月とスッポンである。
みんなが日本語を話しているのもとってもヘンだ。冒頭のアリゾナのシーンの日本語吹き替えでいきなり脱力してしまうので、期待感は鶴田浩二が登場するところまでとてももたない。