実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『ギャング忠臣蔵』(小沢茂弘)[C1963-V]

東映ギャングシリーズの一本、『ギャング忠臣蔵』は、以前から気になっていた映画だが、映画館のスケジュールでもテレビの番組表でも、これまでお目にかかったことがなかった。それがついに東映チャンネルで放映されるというので、めずらしくリアルタイムで観た。

内容は、タイトルからもわかるとおり、忠臣蔵を現代のギャングの世界に置きかえたもの。こんなにやらないのはおもしろくないからではないだろうかという予感はあったが、それが的中して、やはりあまりおもしろくなかった。忠臣蔵のかったるさは、型にはまっているからこそ我慢できるのであって、現代に置きかえたりするとかったるさが際立つ。あるいは、ギャング映画もヤクザ映画もストーリーの基本は忠臣蔵なので、わざわざ忠臣蔵になぞらえてもあまり意味がないのかもしれない。

浅野内匠頭高倉健大石内蔵助片岡千恵蔵吉良上野介=安部徹という配役は、どの正統派忠臣蔵よりもまっとうである。しかし、90分経っても一向に討ち入りしないのでヘンだと思ったら、これは第一部。ウケがよくなかったため、第二部は製作されなかったらしい。四十七人が海岸で、夕陽を浴びて敵討ちを決意するところで終わっているので(ラグビー部か?)、本当にここで終わりだったらそれなりに斬新だ。しかし実際は第二部がある前提で作られているため、いろいろなエピソードが中途半端に散らかったまま。

キャストは、ギャング映画+時代劇といった感じで超豪華。片岡千恵蔵の子分には、江原真二郎や梅宮辰夫や千葉真一や曾根晴美がいるし、悪役には内田良平もいるが、ほとんど活躍の場もなく終わっていて、とにかくムダに豪華である。最もムダに豪華なのが、鶴田浩二丹波哲郎鶴田浩二は、健さんが新婚旅行でパリに行ったときに知り合う肺病病みのギャングで、元気になって帰国したところで活躍の場もなく終わり。丹波哲郎アメリカのギャングの用心棒で、ぜったい潜入FBIかなにかだろうと思ったが、ファイティング・清水という名前からするとそうではないみたい。モノトーンの水玉のジャケットを着てニヤリと笑い、存在感は抜群だが、こちらも活躍の場もなく終わり。

ところで、2月からやっている「ギャングムービースペシャル」、「もしかして…、いや、期待は禁物…」と心のなかで葛藤してきたが、やはり悪い予感が当たって今月で終わり、『東京ギャング対香港ギャング』[C1964-21]の放映はないらしい。これをやってくれたら死んでもいいくらいに思っているのに、どうしてやってくれないのだろうか。