実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『逆襲獄門砦』(内田吐夢)[C1956-35]

同じくフィルムセンターの特集「よみがえる日本映画」(公式)で、内田吐夢監督の『逆襲獄門砦』を観る。なぜ観客はほとんど男なのだろう?

ウィリアム・テルの話を幕末の日本を舞台に翻案したものだということで、林檎が蜜柑に変わっていた。ウィリアム・テルってその林檎の話しか知らないけれど、全体のお話もウィリアム・テルに基づくものらしい。

時代劇、しかも幕末ということで、苦手感満載。しかも汚い農民モノ(差別的表現ですみません)。かなり苦手なジャンル。主役は片岡千恵蔵で、悪役は月形龍之介。悪代官の月形龍之介は悪くないんだけれど、千恵蔵にこういう泥臭い役は似合わない。顔の濃さが強調されて暑苦しいし、芝居もオーバーで暑苦しい。上述の蜜柑のシーンなんて、結果がわかっているだけに「もう、つべこべ言ってないではよやれよ」とイライラしてしまう。

ラストの、農民たちが大挙して代官屋敷になだれ込むシーンはたしかに圧巻。画的にもすごいけれど、1956年に、民衆が団結して悪代官を倒すという映画が作られ、そこに希望が託されているというのが非常に興味深い。万国ではないけれど、まさしく「万国のプロレタリア団結せよ」。

千恵蔵が「今まではひとりでやるのが好きだったんだけど…」と言うシーンがあるが、千恵蔵映画としては、個人のヒーローが活躍して悪を倒すほうがおもしろい。あと、ビジュアル的には囚人が働かされている獄門砦がおもしろかった。