実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『地獄の波止場』(小杉勇)[C1956-34]

フィルムセンターの特集「よみがえる日本映画」(公式)で、小杉勇監督の『地獄の波止場』を観る。

定年間近の老機関士(小杉勇)と弟子の若い機関士(三橋達也)を描いた、小杉勇版『ジャライノール』[C2008-35]。舞台は炭鉱ではなく製鉄所で、強盗殺人事件が起こる話なので、内容はかなり異なるけれども。

霧が立ちこめる夜の製鉄所の雰囲気がすばらしい。これはいったいどこの製鉄所なのだろう。ちょっと『倫敦から来た男』[C2007-48]を連想した。いかにも何かが起こりそうな不穏な空気。ノワールな空気。そしていつも犬を連れている、殺人犯の安部徹。後年のただのイヤなやつとは一味違う不気味さ。こんなに存在感のある安部徹もめずらしいのではないか。

最後は、小杉勇三橋達也、安部徹によるアクション映画となる。これも製鉄所というロケーションが生かされている。製鉄所に詳しくないので、どれがどういう設備かわからないけれど、ずっと高いところへ階段を上って行ったり、なかなか見ごたえがあった。

それにひきかえ、つい出来心で拾ったお金を持ち逃げしてしまい、苦悩する小杉勇のドラマは、印象がうすい。もともとわたしは小杉勇が苦手。戦前、ぜんぜん二枚目じゃないのに二枚目役をやっているのがはげしくイヤだった。今回はジジイ役だったので、それほど気にはならなかったけれど。