実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『ギャング対Gメン』(深作欣二)[C1962-34]

東映チャンネルで録画した深作欣二監督の『ギャング対Gメン』を、ミルクを飲みながら、じゃなくてミルクティーを飲みながら観る。

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スクリーンで観たときには星をつけていなかったが、観直してみたらかなりよかった。ギャングを装ったGメンに潜入警官(地味だけど)と、何でもありで見せ場もいっぱい。特に無常感の漂うラストがいい。

当時はかっこいい鶴田浩二を期待して行って、運送会社のオヤジで佐久間良子に目尻を下げている姿にがっかりしたのだったが、今ではこの時代のギャング役(今回はGメンだが)の鶴田浩二はみなかっこ悪いと知っているので、特に落胆するにはあたらない。

丹波哲郎が悪役で、ギャングっぽい雰囲気も似合っていてなかなかいい。でもやっぱりタンバは正義の味方でないといけない。最後に勝つような悪役ならいいが、やられてしまってはいけないと思う。

この映画でいちばんかっこいいのは梅宮辰夫。まだスマートで、ダークなスーツを着こなし、あまり表情をみせずクールだ。そういえば、かっこいい梅宮辰夫なんて、深作の映画でしか見られないような気がする。彼は、鶴田浩二を兄の敵として狙っているが、自分の手で殺りたいのでいつも付き添って護衛する役。ほとんど小林旭に対する宍戸錠の役回りで、しかもこれとそっくりな設定が渡り鳥シリーズかなにかであったはず(パクリですか?)。

ギャングがキャバレーを経営していて、そこの女性歌手の見せ場があって…というのも日活アクションっぽい。考えてみれば、東映のギャングシリーズは日活アクションのヒットに対抗して考え出されたものなのだろうから、当たり前なのかもしれない。でも鶴田浩二は、ギターを抱えてキャバレーに行って民謡を歌ったりはしない、もちろん。

梅宮辰夫もそうだけど、千葉真一曽根晴美が出ているのが深作っぽいところ。千葉ちゃんはまだコドモっぽい雰囲気だが、やたらと楽しそうなのが微笑ましい。死ぬ間際、鶴田浩二丹波哲郎を前に、クサい芝居を熱演するのが楽しい(悲しいシーンなのに)。曽根晴美は作業服みたいな格好で終始かっこ悪いが、こちらも死ぬ間際にかなりの見せ場が用意されている。

ギャングシリーズは、いろんな監督が手がけていて特に統一した内容もないが、ギャング=石井輝男のイメージがあるので、ギャングシリーズの一本としてみるとこの映画はちょっと異色な感じがする。しかし深作欣二の映画としてみると、寄せ集めのメンバーが活躍するという点が『白昼の無頼漢』[C1961-29]や大好きな『博徒外人部隊[C1971-21]と共通する。深作の好みなのかな。