新文芸坐の特集「深作欣二の終わりなき戦い」(チラシ)で『県警対組織暴力』を観る。10年ぶり二度め。
- 出版社/メーカー: 東映ビデオ
- 発売日: 2003/03/21
- メディア: DVD
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- ファーストシーン:菅原文太が無銭飲食しようとしたチンピラたちをいたぶってお金を取るシーン。「昭和38年 倉島市」というテロップと倉島市(架空)の港の風景(あれはどこですか?)に続き、チンピラを乗せた白い車が到着する。
- ラストシーン:菅原文太が轢き殺されるシーン。雨の中に倒れている菅原文太に彼の死を表すテロップが重なったあと、暗転して「終」。
- タイトルは『県警対組織暴力』だが、実際の構図は組織暴力対組織暴力。片方は、地元のヤクザ(松方弘樹)+地元警察のたたき上げ刑事(菅原文太)。もう片方は、バックに大阪がついたヤクザ(成田三樹夫)+県警から来たキャリア組警部補(梅宮辰夫)+元ヤクザの市会議員(金子信雄)+大企業。勝敗は明らかで、癒着しながらも双方ともにけっこううまくやっていた広島弁のヤクザと地元警察が、標準語で語られる正義や議員バッジや堅気の肩書きで外面を繕われた大きな権力につぶされる話。
- 前半は菅原文太と松方弘樹がイケイケで、冒頭の菅原文太の強烈な登場シーンや、金子信雄の刑事課長への電話を松方弘樹を取るシーンをはじめ、とにかくニヤリとする場面が多くて痛快である。ことあるごとにアカをののしる汐路章の刑事も楽しい。しかし後半になると彼らはどんどん追いつめられ、画面は暗い雰囲気に覆われていく。最後は菅原文太の松方弘樹への報われない愛に胸をつかまれる。ラストの雨の中の死のわびしさと、凍りつくような恐ろしさも格別(トンネルのロケ地が気になる)。
- 松方弘樹の死の余韻を断ち切るように梅宮の笑える体操シーンをもってきたかと思ったら、文太の死で奈落の底に突き落とす、終盤の構成が見事。
- 「ぜったいに警察は辞めない」「ぜったいに離婚届に判は押さない」といった菅原文太の台詞が彼の気性をよく表しており、「警察を辞めない」の台詞がラストの彼の行き着く先と結びついていて興味深い。