実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『無米楽』

今日の1本目は、顔蘭權監督、莊益増監督の『無米楽』。台湾南部嘉南平原の農村を舞台に、米農家の生活を追ったドキュメンタリー。

まず、中心になる老夫婦のキャラクターがすばらしい。この映画の魅力のかなりの部分は彼らに負っている。日本語の古い流行歌を朗々と歌うおじいさんもいいが、鋭くつっこむおばあさんがまたいい。ほとんどが戦前・戦中のものだと思われるおじいさんの歌は、『蘇州夜曲』しかわからない渋い選曲。『北国の春』が出てきたのにはちょっとがっかりしたが。

彼らが田んぼの中の三合院かなにかに住んでいたら、たぶんもっとよそよそしい、遠い世界に感じられてしまったと思う。しかし彼らは花生の商売もやっていて、一応町というか、村の目抜き通りに住んでいる。この映画の舞台は台南縣後壁郷菁寮村。私はこの村には行ったことがないが、台湾の小さい町にはけっこう行っている。中心に小さな町があって、そこを一歩外れると田んぼや畑が広がる、という光景は典型的だ。だから映画に出てくる町の感じに親近感があって、なにげない町のたたずまいがすごくよかった。

気になったのは、時々狙ったような(狙ってるんだろう)美しい朝日や夕陽などのショットがあること。そんなに狙わなくても、もっとさりげなくて美しい風景はたくさんあるのにと思う。

ニュース映像を除いて全編台湾語だったと思うが、これを‘Chinese’と書いてしまう映画祭の姿勢には呆れる。ついでに言うと広東語映画もChinese。製作国を書かない代わりに言語を書いているということだったと思うが、全部ひっくるめてChineseと書くなら、書く意味がないのでは。