実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『ミャオミャオ(渺渺)』(程孝澤)[C2008-37]

昨日、一ヵ月以上ぶりに実家から帰宅。その第一の目的は、東京国際レズビアン&ゲイ映画祭(公式)。今日はその最終日で、朝から表参道へ。当日整理券を配布するというので1時間以上前に行ったのに、スパイラルビルの開館は開演30分前の11時。30分以上も並ぶハメになった。日陰だったのが救い。

一本めは程孝澤(チェン・シャオツェ)監督の『ミャオミャオ』。關錦鵬(スタンリー・クワン)監製のこの映画、昨年のこの映画祭でやらなかったので諦めていたら、なぜか今年上映。

女子高生の小璦(張榕容)は親友の渺渺(柯佳嬿)が好きで、渺渺は中古CD屋の店主の陳飛(范植偉)が好きという、『藍色夏恋[C2002-03]や『花蓮の夏』[C2006-17]も連想させる、同性愛入り青春映画。『藍色夏恋』ほどさわやかではもなく、『花蓮の夏』ほどシリアスでもなく、もっとかわいらしい雰囲気。いささかかわいらしすぎるというか、メルヘンチックなのがちょっと気になる。最近の台湾映画の例にもれず、出てくるモノや場所がきれいすぎるのも気になる。

上に例を挙げた映画たちには遠く及ばないが、この映画のオリジナルな点は、第二の男が登場するところ。死んでいるから回想のみでの登場だが、陳飛を好きだったバンド仲間の小貝(吳慷仁)である。これにより、小璦と渺渺、渺渺と陳飛、陳飛と小貝の三つのストーリーが進行する。友情や憧れの延長線上にある女友だちへの思い、おばあさんの初恋をなかばなぞるように、なかば対抗するように進行する恋、そして同性愛というものを受け入れることができなかった過去への悔恨と決別。残念なのは、それらがいまひとつリンクしていないように思われること。ふたつの同性愛ストーリーの印象が強く、それらをつなぐべき渺渺と陳飛のストーリーの印象がうすい。いろいろ詰め込みすぎな気がするし、人工的な匂いがするのも気になる。

柯佳嬿(アリス・クー)は、『一年之初』[C2006-10]のときはもっときれいな人だったような気がするが、けっこう地味で、小璦が一目見て興味をもつ相手としては存在感がうすい。張榕容(サンドリーナ・ピナ)は、今回はじめていいと思った。あいかわらず顔は好みではないが、途中からすごくかわいく見えてくる。大人と子供のあいだの微妙な年頃の輝きを、よく表現していると思う。范植偉(ファン・チーウェイ)は、歳をとったなあというのが第一印象。陰のある役だけど、なんだか鈍重な感じで残念でした。もう一皮むけて、もっと活躍してほしいのだけれど。

渺渺のおばあさんの思い出の曲として出てくる日本語の曲は、日本のものではなく、台湾人(原住民)の高一生が作った“長春花”という歌らしい。渺渺がタイトルをつなげてラブレターを書くCDについては、ココに詳しく紹介されている。この中で曲が実際に流れるのは陳綺貞(チアー・チェン)の“旅行的意義”だけで、これはとても好きな曲。『台北に舞う雪』[C2009-13]でも使われていたが、この映画が先にあったのだから、別の曲にすべきだったのでは。

渺渺のおばあさんが若いころ台湾で住んでいた家なのか、彼女の電話の声に重ねて映しだされるのは菁桐太子賓館。そのものズバリな写真はないが、出てきた場所に近い部分の写真を紹介しておく。2009年5月に訪れたときのもの。