実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『非婚という名の家』

カフェでオープンサンドを食べて、午前中と同じ会場へ。今日の2本目は、陳俊志監督の『非婚という名の家』。ゲイサウナを経営する男性とそこに集うゲイたちを追ったドキュメンタリー。

様々な断片的なエピソードをつなぎ合わせた構成で、全体としてひとつのストーリーがあるわけではないが、中心になるのはパートナーを病気で失った二人の男性である。パートナーが亡くなる以前のことについてのインタビューも交えて、彼らがその死を乗り越えようとするさまを撮っている。キャメラの位置、そしておそらく監督の心情的な位置も、かなり登場人物に寄っていて、それだけに、悲しみや痛みといった抽象的な言葉には置き換えられない、複雑なナマの感情が直接こちらに伝わってくる。

相手の家族につきあいを認めてもらいたいということは、生きているときであればふつうだと思うが、ここでは相手が死んだあとの家族との交流が描かれている点が新しい。死者を悼む気持ちを相手の家族と共有し、一緒に乗り越えていこうとする様子や、葛藤はあっても、ふたりの関係を理解して受け入れようとする家族の前向きな姿勢に心をうたれる。