『非婚という名の家』とセットの3本目は、侯季然監督の『台湾黒電影』。1979年から1983年に大ブームを巻き起こしたが、現在は映画史からも抹殺されている黒電影についてのドキュメンタリー。内容は非常に興味深いが、映画としては、大ヒットした黒電影の断片+関係者や批評家へのインタビュー+当時の社会を表す新聞記事というオーソドックスな構成。
おそらくこの映画の意義は、忘れられていた黒電影を引っ張り出して光を当てたことそのものにあるのだと思う。反共プロパガンダから乳首まで、黒電影が作られた背景やブームの原因が語られているが、だいたい予測できる内容にまとまっている。一番驚いたのは、陸小芬ってこんなことしてたのか、ということだったりする。この映画を入り口として、今後、黒電影を題材とした映画史研究が進むことが期待される。ティーチ・インでの質問にもあったが、日本映画や香港映画を含めた共時的な視点からの研究も進んでほしい。
そして我々観客が最も期待するのは、ここに出てくる映画が観られるようになることだ。電影資料館にあるフィルムの状態がどうなのかわからないが、来年この場で観ることができたり、台湾でDVD化されたり、どこかからネガやフィルムが発見されたり、この映画がきっかけとなってそういうことがあればとても嬉しい。
上映後、侯季然監督によるティーチ・インがあった。監督はとても若そうで、顔はどこから見ても台湾人だが、グレーのビジネススーツを着た姿はとても台湾人とは思えない。映画監督にはもっと見えない。質疑応答の要旨は次のとおり。