実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『壁を抜ける少年(穿牆人)』(鴻鴻)[C2007-07]

映画祭8本目は、アジアの風の『壁を抜ける少年』(公式)。台湾映画である。台湾映画は(アニメを除いて)基本的に全部観るよう心がけている。しかし私はSFやファンタジーが嫌いだ。この映画は「近未来SF」だと書いてあったので、無理して観なくてもいいと思ったが、ちょうど都心での仕事の予定が入っている日だったので、映画祭に行かずに帰るのももったいないということで予定に入れた。「監督の鴻鴻(ホンホン)って誰?」と思っていたが、稲見公仁子さんのブログ[台湾影視娯楽街8巷4號20樓]の[穿牆人〜鴻鴻について](LINK)によれば本名は閻鴻亞とのこと。それなら、『エドワード・ヤンの恋愛時代』[C1994-11]で倪淑君の義兄をやっていた人だ。やはり観たほうがいいらしい。

最初から、やたらに動くキャメラとつけすぎの音楽(音楽自体はおおむね美しかったのだが)が気になった。しかし前半はあまりSFっぽくもなかったし、主人公の高校生、張永政(チャン・ヨンツン←このカタカナ表記は変)と、耳の不自由な女の子、李佳穎(リー・チャイン)の話は悪くなかった。李佳穎は國立故宮博物院で働いていて、『時の流れの中で』[C2004-12]、『西瓜』[C2005-16]に続く故宮ものであるのも注目ポイントである。張永政はなかなか好感度大の少年だし、ちょっと李康宜(リー・カンイー)を思わせる李佳穎はなかなかかわいい。

しかしながら、李佳穎が退場し、代わりに盲目の少女、路嘉欣(ルー・チャシン)が登場するところから、イヤな感じになってきた。お話もSFっぽくなるし、舞台も現実の台湾の街ではなくなる。ゲームの美少女戦士みたいな(見たことがないので想像)路嘉欣の格好がまず我慢ならないし、サングラスを取ったら思いっきり私の苦手な顔だったのが決定打となった。三箇所ぐらい入るナレーションも唐突で、安易すぎるように思われる。

最後に舞台は20年後に飛ぶのだが、張永政の20年後は戴立忍(レオン・ダイ)だった。金城武も年をとって戴立忍になっていたのに、それは変ではないか。だいたい高校生の20年後はまだ30代なのに、戴立忍は40代前半。しかもどうみても40代後半にしか見えない。老けすぎ。

張永政が街中で、李佳穎が歌っていた思い出の曲を聞き、必死で追いかけてつきとめたらゴミ収集車の音楽だったところと、おとうさんに「僕が女の子だったら嬉しい?」と聞いたら「男が好きなのか?」と聞き返されたところがツボだった。

壁を抜ける少年という発想は村上春樹を連想させるが、別の原作があるようだ。

終映が22時を過ぎていたので、ティーチ・インはパスしてダッシュで帰る。それでも帰宅は午前様直前になってしまった。