実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『15: The Movie(15: The Movie)』(陳子謙)[C2003-39]

シネマート六本木のSintok2012シンガポール映画祭(公式)で、陳子謙(ロイストン・タン)監督の『15: The Movie』を観る。

  • 5人の(たぶん)15歳の不良少年たちを描いた映画。出てくる少年たちは本物らしいが、大人顔負けの犯罪を行うかと思えば、背伸びしてみせてもまだまだコドモという面もあり、そのギャップが痛ましい。
  • わたしが初めて観た陳子謙の映画は『4:30』で、この映画が大好きなのだが、そのあと観た『881 歌え!パパイヤ』は作風がかなり違って驚いたので、長篇デビュー作のこれはどうなんだろうというのに興味があった。最初は、ところどころ盛り込まれている文字やアニメを駆使したエピソードが目立ち、作品ごとにスタイルを変える人なのだと思ったが、長回しも多く、最後のほうまで観て、『4:30』につながっていく作品だと思った。
  • その長回しは、かなり近い距離から少年たちを捉え、あまり動きのないショットがえんえんと続く。少年が涙を流すショットなどはとてもいい。しかし、彼らは心の痛みに耐えるためにからだの痛みを求めるため、大半は、ピアスの穴を開けたり麻薬を飲み込んだりといった、文字通り痛いシーンである。心の痛みには鈍感だがからだの痛みは極度に苦手なわたしは、それらのシーンを直視できないどころかほとんど見ることができなかった。
  • 少年たちは友情を何よりも大切にし、心の距離も物理的な距離も近い。彼らはゲイではないが、しょっちゅう起きる口げんかはまるで痴話げんかのようだ。団地の部屋などにこもっているシーンが多く、暑いからだと思うが、ほとんど上半身裸である。そのような状況で、精神的な近さが肉体的なふれあいに変わる危うい瞬間がとらえられていて、その生々しさに心を動かされる。
  • マーライオンが水を吐いているのはたぶん見たことがないと思うのだが、この映画のなかでは水を吐いていてときめいた。