バンガロールに来ちゃったの

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『ある落日』(大庭秀雄)[C1959-40]

神保町シアターの特集「デビュー60周年記念 女優 岡田茉莉子」(公式)で、大庭秀雄監督の『ある落日』を観る。不思議なことに、1カ月ちょっとの間に3本めの井上靖原作映画。もちろん未読。

森雅之岡田茉莉子の不倫カップルに、コンちゃん=ノンちゃん=高橋貞二がつきまとい、健全で前向きな説教をたれまくって「不倫はやめよう」キャンペーンを繰り広げるお話。原作もののわりに、森雅之岡田茉莉子は歯の浮くようなラブシーンもないし、観念的な会話もしないし、いろんな意味できわめて抑制されていて非常によい。そこに現れて、例の棒読みっぽい調子で正論をぶつコンちゃん。せっかくの美しいメロドラマも台無し。世の中というものはコンちゃんが思っているほど健全で合理的にはいかないものだということをわからせてあげるべきなのに、そうならない終わり方に不満だ。

奥さんが病気(たぶん結核)なのに不倫してしまうものの、先に手を出さない、浮気もしない、金もせびらない森雅之は、悪い男でもダメ男でもない。今回はそっち方面ではなく、ダンディな魅力で勝負。26歳の岡田茉莉子は非の打ちどころがないほど綺麗。箱根のホテルで、結婚したいのは「小杉さんのような人」と告白するところなど完璧な美しさである。コンちゃんはいつものコンちゃんで、コメディ要素は全くないのに、彼がしゃべるたびに劇場内にクスクス笑いが起こった。

ニュープリントのモノクロ映像もとても綺麗。森雅之は女のアパートに泊まったり温泉マークへ行ったりはせず、岡田茉莉子をあちこちの綺麗なところに旅行に連れ出していいホテルに泊まる。美しい風景に美しい男女。なかでも、冒頭近くで泊まる蒲郡ホテル(現・蒲郡プリンスホテル)と、竹島橋などの周囲の風景が印象的。松竹としては、前年の『彼岸花[C1958-04]に続いての蒲郡ホテルロケだ。

商社勤めの岡田茉莉子の同僚女子たちが、岡田茉莉子の休暇をいちいち問いつめるのが怖かった。わたしも旅行や映画で毎月のように有休を取っていたが、なにか問題でも?