実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『肉体の門』(鈴木清順)[C1964-06]

同じくシネマヴェーラ渋谷の特集「鈴木清順 再起動!」(公式)で『肉体の門』を観る。21年ぶり二度め。

肉体の門 [DVD]

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女の子たちがそれぞれ違う色の服を着ているといえば、連想するのは胡金銓(キン・フー)監督の『迎春閣之風波』[C1973-21]。しかし、そのアイデアはこの『肉体の門』のほうが先。わたしが観たのも『肉体の門』のほうが先なのに、『迎春閣之風波』を観たときこの映画のことは思い出さなかったな。

服の色は、野川由美子=緑、河西都子=赤、松尾嘉代=紫、石井富子=黄。それに喪服(着物)の富永美沙子。実際にはこんな原色一色の服を着た街娼なんていなかっただろうし、全体的にもリアリティは求めていない様式的な映画なので、どうせなら全員美女にしたほうがよかったと思う。つまり、問題は石井富子ですが。まあひとつくらいああいう肉体もあったほうがいいのかもしれないが、デブの裸はあまり見たくありません。洋服のデザインも、ヒロインの野川由美子のがいちばんかわいくて、顔や出番に応じてやや手抜きになっていく感じがする。

時代の空気を象徴するように翻る星条旗木村威夫による気合いの入ったセット、そのリアリティを欠いたセットを満たす蒸し暑い空気のリアルさ、女たちや宍戸錠の肉体のナマナマしい存在感、彼らのたくましくパワフルな生きざま。かなりよくできた力作である。しかし、演劇的で暑苦しい芝居が苦手だからか、「好きか?」と言われるとそうでもなかったりする。