同じくシネマヴェーラ渋谷の特集「鈴木清順 再起動!」(公式)で『らぶれたあ』を観る。ほとんど憶えていなかったが、20年ぶり二度め。
クラブのピアノ弾きの筑波久子、病気療養中で手紙のみでの交際が続いている恋人・待田京介、筑波久子をひそかに想いつづける支配人・フランク永井。三人だけの登場人物による、フランク永井『ラブ・レター』の、40分もかけた手の込んだプロモーション映画。待田京介が書いたラブレターの歯の浮くような文面がたくさん使われ、肝心の『ラブ・レター』は少ししか流れないが、これはなかなかいい曲。
筑波久子は顔がものすごくぱんぱんで、まるで白冰冰(バイ・ビンビン*)みたいだ。待田京介は完全な二枚目役で、二枚目スターとしていけるかどうかのテスト的起用だったのではないかと思われる。二枚目なだけではなくミステリアスな存在でもあるが、過剰に謎めいて怪しげで、その後の活躍ぶりから見ても、二枚目としてはクセが強すぎると判断されたに違いない。フランク永井も、筑波久子を見守る大人の男という感じで、完全に二枚目の役どころだけど、顔があれだし、演技はひどいし、なんだか笑える。
PVの王道的なストーリーでありながら、俳優たちがふつうの美男美女からはみ出していて珍妙だが、それでいて全体を貫く耽美的な、夢を見ているような雰囲気が妙に心に残る。