実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『夏目漱石の三四郎』(中川信夫)[C1955-09]

今週は「台湾シネマ・コレクション」はお休みし、まず神保町シアターへ行く。この映画館は初めて。チラシのデザインやスケジュールの組み方が、今は亡き三百人劇場とそっくりだが、何か関係があるのだろうか。今やっている特集は「豊田四郎東宝芸映画」。中川信夫監督の『夏目漱石三四郎』を観る。三四郎といったら夏目漱石に決まっているので「なんでわざわざ?」というタイトルだが、もしかしてさんすろー♪(『姿三四郎』)と間違えないため?

この映画を劇場で観るのは二度め。DVD-Rで再見したときにもう一度スクリーンで観たいと思ったので観に来た。スクリーンで観ると、玉井正夫撮影のモノクロ映像がとにかく美しい。

そのほかの感想は、DVD-Rで観たときとほとんど変わっていない(id:xiaogang:20070128#p2参照)。悪くはないのだけれど、八千草薫の美禰子と笠智衆の広田先生が思いっきりミスキャスト。そして、小説から持ってきた台詞とそうではない台詞とが全然なじんでいない。美禰子役は、この人ならぴったりという女優はなかなか思い浮かばないけれど、1955年の時点ならやはり岡田茉莉子だろうか。

原作を読んで、三四郎が二枚目だと思ったことはなかったので、映画を観るとちょっと違和感があるが、女の子たちからあれこれ構われるのだから、やはり二枚目なんでしょうね。映画での三四郎は、美禰子やよし子に何をされても何を言われてもあまりに反応がなく、以前はすごく愚鈍に感じられたが、今回はそこがかえって新鮮に映り、印象に残った。この山田真二という人は、この映画を観るたびに「あんただれ?」と思うが、調べてみるとそう無名の人でもないようである。

最後に美禰子は、唐突に(読者や観客にとって)知らない人と結婚する。映画の場合、山田真二、土屋嘉男、平田昭彦と並べてみると、「そりゃあやっぱり平田昭彦でしょう」と思うので、妙に納得してしまった。いいのか悪いのか。