実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『花の慕情』(鈴木英夫)[C1958-33]

神保町のモーニングショー「女優とモード 美の競演 復活上映」(公式)で、鈴木英夫監督の『花の慕情』を観る。

司葉子宝田明主演のメロドラマ。司葉子は華道の家元で、宝田明は歯科医。一見なんの問題もなさそうだが、ふたりの弟たちが山で遭難して死んだことへのわだかまりから母親同士の仲が悪く、交際や結婚を猛反対される、というお話。と言っても「ふーん」という感じかと思うが、母親役が杉村春子長岡輝子と聞けば、急に生々しいリアリティを感じることができるだろう。そんな母親たちや、どの面下げて司葉子に求婚するのかと思う千秋実や、ひとりだけ全く違う空気感を漂わせている平田昭彦なんかに引き裂かれて終わるのではあんまりなので、ちゃんと最後はハッピーエンド。しかしそれに一役買う中村伸郎が単なるいい人なのがちょっと納得いかない。結局宝田とは結ばれなくて、お花に生きようと中村伸郎を訪ねたら、実はエロじじいで愛人にされてしまう、という筋書きがつい浮かんでしまう。

司葉子が家元を務めるのは、父親の代に独立した新興の流派で、そのせいか着ている着物も斬新でおしゃれ。そういう着物をとっかえひっかえ身にまとい、ちょっと陰鬱な表情で凛として佇む司葉子がとても美しい。宝田明の白衣姿にもちょっと期待したけれど、なんだかもっさりした感じでがっかりした。

観る前は知らなかったけれど、司葉子の家の別荘が鎌倉にあるという鎌倉ロケ映画。別荘の最寄り駅としてJR北鎌倉駅が出てくるが、行き帰りに海岸を歩いたりする、あり得ないけれどありがちなロケ地選びがなされている。鎌倉ロケ映画のためか菅原通済もゲスト出演していつもの演技を披露。