実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『収穫(麥收)』(徐童)[C2008-34]

同じく中国インディペンデント映画祭2009での二本めは、徐童(シュー・トン)監督の『収穫』。北京の床屋で働く風俗嬢、紅苗(仮名)を描いたドキュメンタリーである。風俗嬢といっても、1回100元の場末の娼婦。100元といえば、ちょっといいところで二人で食事をするくらいだから、まあかなり安いだろう。

描かれているのは、同僚の女の子やボーイフレンドと談笑しているところ、自宅で電話しているところ、店の経営者やホストとカラオケなどで遊んでいるところ、河北省の実家や病院で家の手伝いや父親の看病をしているところなど、仕事以外の日常生活。日常の紅苗は、別に風俗嬢には見えない、田舎出のふつうの女の子。恋愛や友人関係の楽しみや悩み、親の病気や生活の心配、労働条件や嫌な客の話など、語られる内容もごくふつうの女の子という感じである。本人も親も、風俗嬢をやめたいとかやめるべきとか、風俗嬢をさせてすまないとか、そういったことは一切語らない。父親の治療費を援助しているものの、特に父親が病気だから風俗嬢になったというわけでもないようで、本人は「簡単だから」と言っている。

明るく前向きで自然体の紅苗を素のままという感じでとらえていて、ごく自然に感情を表したり涙を流したりしているのが魅力。実家の麦畑の収穫で、「麦秋」の様子もカラーで見られる。その意味でも原題の“麥收”を『収穫』としてしまったのは惜しく、やはり「麦」は入れたほうがいい。『収穫』というタイトルは検索する際にも著しく不便なので、邦題をつけるときはそのあたりも考慮してほしい。

最後にこの映画を観てわかったこと。娼婦は美人からブスまでピンキリだが、ホストはどこへ行ってもイケメンである。

晩ごはんは、目黒のとんきでひれかつを食べる。