実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『歓楽のポエム(尋歡作樂)』(趙大勇)[C2010-76]

ポレポレ東中野で開催されている中国インディペンデント映画祭2011(公式)で、趙大勇(チャオ・ダーヨン/ジャオ・ダーヨン*)監督の『歓楽のポエム』を観る。

前半の主人公は、屋台でニセの職業斡旋所をやっている若い男。彼が仕事をしたり、部屋を訪れた恋人のような女性と話したり、床屋へ洗髪に行ったりする日常が描かれる。彼は時々、屋上のようなところで京劇かなにかの練習をする。元は役者だったけれど食えないのでいまはやっていない、でも夢は捨てがたく練習は続けている、ということなのかなと思うが、事情は最後まで何も語られないまま。この男が友人の誘いでねずみ講セミナーに参加して逮捕されると、主人公は彼を取り調べる警官に移る。この警官は、容疑者や受刑者に自作の下品な詩を朗読させるのが趣味。逮捕した男になんとか朗読させようとするところや、この警官にすっかり洗脳されているように見える女性受刑者、さらに彼女の脱走事件などが描かれる。

前半と後半で内容や雰囲気が変わるところとか、想像を絶するのに、演じている本人がモデルだというヘンタイ警官とか、インディペンデントらしいヘンテコパワーに満ちた映画。おもしろいんだけれど、わたしはこの警官の顔が生理的にダメだった。あの顔であの詩とかあの取り調べの台詞とか、ちょっと気持ち悪すぎる。

ところで、中国映画、特にインディペンデント系の作品に、ストーリー上の必然性もなく、入浴シーンなどで男性のフルヌードがしばしば登場することは何度か指摘しているが、今日これまでに観た2本の映画にはいずれも男性のフルヌードが出現した。せっかくなのでこの映画にも出てきたほうが統一がとれていていいのではないかと期待して観ていたが(ヌードが見たいわけではない、念のため)、残念ながら出てこなかった(代わりに女性の入浴シーンがあってフルヌードが出てきた)。逮捕された男性の身体検査のシーンで、警官に服を脱ぐように言われて赤パンツ一枚になり、それも脱ぐように言われるところでかなり期待したのだが、前は隠したままですぐにまたはいてしまった。ふつうのおっさんだと隠さないのに、彼はわりと男前だったので隠すことになったのだろうか。繰り返すが、見たかったわけではない。共通点を見つけるのが楽しいだけです。

もうひとつ、今日観た映画に共通していたのは床屋での洗髪である。中国(台湾もだけど)の床屋にはふつうの床屋といかがわしい床屋があって、それは外見ではっきり区別できると思っていたのだが、この映画に出てきたのは見るからにいかがわしげな電飾ぴかぴかの床屋。しかしながら、主人公の男性はそこで単に洗髪をしているようだった。だからといってここがふつうの床屋というわけではなく、彼がここに就職を斡旋したかわいい女の子は売春を強要されるのだけれど、それも事前の了解なしだった。いかがわしい床屋はふつう、女の子も最初からそのつもりで働いていると思うのだが、こういう境界の曖昧な店も実際にあるのだろうか。

この映画の舞台は広州。広州って、日本だと名古屋、台湾だと台中みたいなところなのか、大都会のわりに映画の舞台にならない。今年は広州が舞台の映画も台中が舞台の映画も観たので、次にくるのは名古屋だと思う。名古屋、要チェック。いちおう名古屋が舞台の映画も観たけれど、50年前の韓国映画だからいまのブームとは関係ないよね。