実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『美しい夏の行方 イタリア、シチリアの旅』(辻邦生)[B1352]

『美しい夏の行方 - イタリア、シチリアの旅』読了。

美しい夏の行方―イタリア、シチリアの旅 (中公文庫)

美しい夏の行方―イタリア、シチリアの旅 (中公文庫)

たまたま見つけて、「シチリア」の文字に惹かれて読んでみたけれどつまらなかった。シチリア@イタリアの旅かと思ったら、実はイタリアの旅+シチリアの旅。表題作の「美しい夏の行方」はよりにもよって興味のないフィレンツェを中心とした紀行文。やたらと形容詞、感嘆詞の多い文章(数えたわけではないので印象として)。

著者はあとがきに、「とくにこんどの旅では〈心のときめき〉を何とか素早く書きとめたかった。そのためその場その場の即興的印象に集中した。(p. 195)」と書いているが、ルネサンスの絵画などにほとんど興味がないわたしにとっては、そんなに感動されても疲れるだけである。そもそも感動を共有することなどできないと思うが、それは措いても、やはり感動を伝えるには具体的な「何」「どこ」「なぜ」といった情報が必要だ。「すばらしい」を連発してもダメである。

シチリア紀行の『海に向って、夏』では、ギリシャ時代の円形劇場ばかり訪ねている。全く興味がないわけではないが、興味の対象はやはりずれている。映画への言及はあちこちにあるが、深くつっこまれることがないのは残念だ。それに、イタリアへ行ったのに食べる話がぜんぜんないなんて(食あたりの話が一度だけあるが)。

ただ、中国との類似はこの本からも感じられた。ぜひ近いうちに、中国を見つけにイタリアへ行きたいものである。