三連休の後半は、一ヵ月半ぶりの温泉旅行。行き先は箱根。順調に行けば1時間ちょっとで着くので、甘くみて10時ごろ出発。最初のガソリンスタンドから混んでいて、国道134号は最初から渋滞。みんなが七里ヶ浜や江ノ島へ行ってちょっと流れたと思ったら、湘南大橋手前からまた渋滞。西湘バイパスはガラガラで、今までの渋滞は何だったんだと思ったら、箱根方面へ分岐したとたんほとんど止まる。やっと箱根口ICで降りたあとの国道1号は、湯本あたりまでと宮ノ下附近で渋滞したが、その後の国道138号は順調にいき、13時半ごろようやく仙石原のラリック美術館に到着。
当然ラリックを鑑賞した…わけではなく、カフェレストランリスで昼ごはん。箱根に入ったころから雨がぱらつくあいにくの天気だったが、パラソルのあるテラス席で芝生の庭を眺めながら(左写真)、ほどよい量のセットメニュー(右写真+サラダとパン)を食べる。このあと芦ノ湖へ行く計画だったが、そんな時間はなくなったので、おかわり自由の珈琲を3杯飲んでから、宿のある塔ノ沢温泉まで戻る。ちょうどチェックイン時間の15時に着けるつもりが、箱根から帰る車(推測)の渋滞に巻き込まれ、16時すぎてやっと到着。これで晩ごはんまでにお風呂二つという計画も挫折。
今回の宿は、塔之沢の元湯環翠楼(公式)。最近渋い宿に泊まっていなかったので、今度は絶対に渋い老舗旅館と決めていた。環翠楼は、1614年に「元湯」として開湯したという、ものすごく歴史のある宿。「環翠楼」の名は1890年に伊藤博文がつけたとのことだが、伊藤博文は嫌いだ。これまでに泊まった有名人も、政治家やら皇族やら、あまり興味のない作家やら、歴史のわりにぱっとしないが、特筆すべきは1911年に孫文が泊まっていること。現在の建物は、「元湯鈴木」という名前だった1884年に建てられたものらしい。部屋は早川に面した一階のトイレ付きで、15畳もあって広い。晩ごはんまでにまず岩風呂へ。大正時代のタイル貼りの浴槽がウリで、たしかにこれはレトロで渋い。しかしシャワーはたったの二つ、当然ふさがっていてしばし呆然とする。浴槽は二つあるがどちらも小さいし、狭い脱衣場には洗面台さえもない。ほかの客がほとんどいないときにゆったり入れば楽しめると思うが、からだを洗うという目的には不向きである。若い女性向けのガイドブックにこの旅館の紹介がないのも頷けるが、古い建物を保存したまま改装するのはたしかに難しいだろう。
晩ごはんは、味はまあまあだが、品数はキープしつつ量が少なめで好ましい。暖かい料理はちゃんと一皿ずつ持ってきてくれる。写真は秋刀魚柚庵焼き(左)と太刀魚竜田揚げ(右)。食べながら、ちびまる子ちゃん→サザエさん→田舎に泊まろう台湾編(かなりひどかったですね)を観て、それから露天風呂へ。比較的新しそうなこちらはさすがに洗面台はある。しかし、早川に直接流しているためシャンプーは禁止。湯舟はこちらもかなり小さい。男湯は露天だったようだが、女湯は外に面してはいるが屋根のある半露天だった。
一休みして三度めのお風呂。この旅館には家族風呂が二つあり、岩風呂と同じタイル貼りの家族風呂を狙っていたが、残念なことに現在使用中止。もう一つの新しい家族風呂へ行くと、こちらは使用中。22時からは露天も貸切にできるというすばらしい制度があるので、ふたたび露天へ行く。こちらもふさがっていて、J先生は「女湯が空きますように」、わたしは「男湯が空きますように」(別にいやらしい意味ではなく、単にふつうは入れないから)とつぶやきながら少し待ったら女湯が空いた。J先生によれば女湯のほうがいい感じらしい。出たら男湯も空いていたので入ろうかと思ったが、J先生に冷たく断られて部屋に戻る。よく温泉旅館に泊まっているが、次のようなのが最近の流行というか傾向である。
- 到着したらロビーやラウンジにゆったり座って、お茶をいただいたり宿帳を書いたりする。
- 浴衣が選べる、身長に合ったサイズを出してくれる、2枚ある、動きやすいデザインのものがある、足袋なども用意されているなど、浴衣類の充実。
- お風呂や脱衣所に、シャンプー類はもちろん化粧品などいろいろな備品が用意されている。脱衣所は、お肌の手入れやブローなどのための設備も充実。
- 一人用鍋などでその場で煮たり焼いたりする料理が出る。
- ゆったり過ごせる遅めのチェックアウト。
環翠楼は、こういった流行とは全く無縁である。いきなり立ったまま宿帳を書かされ、浴衣は大きすぎ、脱衣所には何もない。ウリは古さで、完全に我が道を行っている。その姿勢は潔く、基本的には好ましく感じた。ただ、せめてお風呂のシャワーは増やしてほしいと思う。