「7月は観たい映画が多すぎる」と、いろんな人が書いている。私も今月は、近年まれにみる映画三昧月間になりそうだ。その輝かしいスタートは、ラピュタ阿佐ヶ谷の「昭和の銀幕に輝くヒロイン[第35弾]藤純子」(公式)の『侠骨一代』(映画生活/goo映画)。
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一方の藤純子は、8歳のときに別れたまま兵役中に死んでしまう健さんの母親と、(回想シーンで母親役が藤純子なのを見たとたんに予想がつくとおり)その母親にうりふたつの娼婦の二役。さすがに特集上映の一本に挙げられるだけあって、美しいうえに存在感もたっぷり。マキノ映画でしかありえない台詞としぐさ満載だが、マキノにしてはかなり色っぽくてはっとさせられる。しょっちゅう瓶牛乳を飲むのがポイントだ。瓶牛乳は昨夜も観た『花連の夏』[C2006-17]にも出てきたなと思い、ほかに出てくる映画はないか考えてみる。『夢遊ハワイ』[C2004-10]でも重要な小道具として登場していたのに思い当たるが、もっとありそうで意外にない。
大木実は、最初の軍隊のシーンでは、えらく老けた初年兵で全然冴えない。ところがシャバに戻って着流しで登場すると、別人のようにきまっていて一瞬はっとする。戦友だけど今は敵対する組織に属するという役どころだが、ちょっと中途半端な扱いなのが残念でした。健さん親子の面倒をみる和尚を石山健二郎が演じていて、『雁の寺』(id:xiaogang:20070623#p3)に続いて「喝!」が出てきた。石山健二郎は「お母さんには十分白い飯を食べさせてあげた」らしいが、藤純子を愛人にしたのではないかと心配になる。
いつものヤクザ映画とは多少趣向が変わっていて、藤純子は満洲へ行くし、型どおりの展開とは少し違う。軍隊から乞食まで盛りだくさんで、多少盛りだくさんすぎるが、もちろん映画はおもしろい。泣きのシーンが多いが、いつものとおり、あざとさぎりぎりでありながら必要以上に盛り上げることなく泣かせる、絶妙のマキノ演出。昨今の感動モノ映画は(観ずに言うのもナンだが)、マキノ雅弘を観てもっと勉強すべきだろう。
ところで、この映画に南原宏治は出ていないが、チラシにもあちこちのDVD販売サイトにも南原宏治の名前がある。goo映画によれば宍戸市三郎役ということだが、その役は名和宏だったはずだ(このキャスト一覧には天津敏も載っていない)。今回はマキノの映画と藤純子目当てだったからいいが、もし南原宏治目当てで行っていたら血を見るぞ。