実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『日本俠客伝 血斗神田祭り』(マキノ雅弘)[C1966-11]

今日は一日フィルムセンターで、『日本俠客伝』シリーズを3本観る予定。昨日上映された3本が傑作揃いなのだが、これらはもう何度も観ているので今回はパス。今日のは、初回の『日本俠客伝 血斗神田祭り』(映画生活/goo映画)のみ劇場で観ている。DVDでもわりと最近(と言ってももう1年半前か)観たのだが(id:xiaogang:20060803#p2)、あまりによかったのでもう一度スクリーンで観ることにした。絶対にいいとわかっている映画を観に行くことほどウキウキするものはない。

日本侠客伝 血斗神田祭り [DVD]

日本侠客伝 血斗神田祭り [DVD]

DVDの感想と同じような内容になるが、まず出演者の豪華さに唸らされる。いつもの人たちとちょっと意外な人たちとのコンビネーションも抜群。鶴田浩二は、賭場のシーンで登場したときから、ちょいと斜めに座ったりしていかにもいわくありげだし、そのわりになかなか表には出てこなくて、「いるぞ、いるぞ」という思わせぶりな感じがたまらない。天津敏と遠藤辰雄の極悪コンビは何度観ても最高。ヤクザ映画では悪役が多い河津清三郎が火消しの頭を演っていて、これがまたすごくよかった。アラカン加藤嘉の親分もいいが、彼らのような棺桶に片足突っ込んだようなのとは違い、まだまだ第一線で働いているという感じがいい。そして前にも書いたように中原早苗がすばらしい。マキノ映画では、『次郎長三国志』シリーズの越路吹雪の系譜に連なる、サバサバして気っぷのいい女性だが、これが日活時代の中原早苗のキャラクターと見事にマッチしている。野際陽子には興味ないが、ヤクザの娘とはいえお嬢さんで、しかも肺病病みという、少なくともわたしのもっている野際陽子のイメージからは程遠い役を、なかなか好演していると言わざるを得ない。里見浩太朗も好印象だった。

ヤクザ映画などの男の映画は、アクションシーンよりも、男二人が話している場面というのがいちばんの見せ場だと思う。静の場面がすばらしいと、動の場面も生きてくる。この映画では、やはりまず鶴田浩二高倉健である。女の話をするというのも珍しくていい。鶴田浩二長門裕之が並んで話すシーンもよかった。こういった通じ合うものがあるふたりというのではないが、鶴田浩二が天津敏に呼ばれるシーンもなかなかの見せ場。鶴田浩二(が演じる長次)の品格に誰もが圧倒されている雰囲気が圧巻。

しかし、跡継ぎもいないしたいして興味もなさそうなのに、健さんやよ組の自己満足のために澤せいの再建を背負わされる藤純子はかなり気の毒だ。