実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『海域アジアの華人街 -移民と植民による都市形成-』(泉田英雄)

『海域アジアの華人街 -移民と植民による都市形成-』読了。

海域アジアの華人街(チャイナタウン)―移民と植民による都市形成

海域アジアの華人街(チャイナタウン)―移民と植民による都市形成

中国、台湾、ヴェトナム、タイ、マレイシア、シンガポールインドネシア、フィリピンの南シナ海沿岸の都市の華人街について、その成り立ちや空間構成、構成要素や住居の構造等に関する研究をまとめたもの。文章がわかりにくく、校正レベルの間違いが散見され、地図に本文中で紹介されている都市が全部は載っておらず、図のキャプションに問題がある等が気になるが、チャイナタウン大好きの私にとって、内容的には非常に興味深い本だった。

特に華人街の空間構成に関して、天后宮、関帝廟、福徳祠等の位置関係についてはこれまで気にしたことがなかった。これから台湾の老街等を歩くときにも、そのあたりに注目してみたいと思う。それからこの本によれば、「カキ・リマ」や「五脚基」と、「亭子脚」や「騎廊」(「騎樓」のほうが一般的だと思うが)とは異なるもので、公的歩廊としてのものは「カキ・リマ」、「五脚基」と呼ぶのが正しいらしい。そうすると台湾のものも、日本植民地時代の建築規則に基づいて作られたものは、「カキ・リマ」、「五脚基」と呼ぶべきだと思われる。

非常に広い範囲の調査から、共通点や相違点を抽出しているので、個別の華人街について、あるいは個別のテーマについて見ると薄い感じが否めないが、どれをとってもひとつの研究テーマになり得るであろうものなのでしかたがない。ひとつ気になったのは、マレイシア等のコーヒーショップ(Kedai Kopi)のことが「屋台食堂」と書かれていること。たしかにその実態を表現する言葉ではあるのだが、一般的に流通している言葉が無視されているのは残念だ。