実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『幸福への招待』(千葉泰樹)[C1947-19]

神保町シアターの特集「一年遅れの生誕百年 映画監督千葉泰樹」(公式)で、『幸福への招待』を観る。いくぶん説教くさい地味な映画だが、大河内傳次郎入江たか子高峰秀子河津清三郎、花井蘭子、田中春男と、新東宝的オールスターキャスト。

戦後南方から戻ってきた女学校の元校長、大河内傳次郎が、かつての教え子たちを助けようと奮闘する話。立派な覚悟でやる気まんまんの大河内傳次郎が、「貞淑な妻になれという教育が自分を不幸にした」とか「戦争未亡人だからといってとやかく言われるのはおかしい」とか言われ、自分の関わった教育を問われたり、自分の中の封建性に気づかされたりして、だんだん自信を喪失する。「自分ひとりの力ではどうにもできないことだ」と逃げてしまうのにはがっかりするが、そのためにデコちゃんを助けられなかったので、自分のできる努力をして花井蘭子を助ける。

花井蘭子は夫の愛人を殺して服役中で、大河内傳次郎が夫の田中春男を説得して、出所後いっしょに暮らせるようにしてあげるのだが、なにせ田中春男なので、親や世間に何か言われたらすぐに花井蘭子を見捨てそうで油断ならない。花井蘭子は殺人罪で服役中と言われているけれど、汽車の中でどついたらドアが開いていて落ちた、というのは、殺人罪にはならず傷害致死とかではないかと思うのだが。

デコちゃん人気で連日の大入りだったが、まだ子役の面影の残る40年代に、堕胎に失敗して死ぬ未亡人の役なんてやっていたとは意外である。丹下左膳でも小原庄助さんでもない大河内傳次郎は、なんとなくピンとこなかった。

舞台は青森県のお城のある町。近代建築が出てこないのでそういう気がしなかったが、弘前だろうか。カキ・リマ(五脚基)のあるメインストリートがいい感じだった。