朝から阿佐ヶ谷へ。ラピュタ阿佐ヶ谷のモーニングショー「昭和の銀幕に輝くヒロイン」は木暮実千代。今日まで、1952年のマキノ雅弘の映画、『離婚』をやっている。
1952年といえば、『お茶漬の味』[C1952-06]に『次郎長三國志 第一部 次郎長賣出す』[C1952-08]の年。『離婚』はまさしくそういう映画で、またまた佐分利信と木暮実千代のコンビ。さらに江川宇禮雄、斎藤達雄、飯田蝶子と、新東宝なのに松竹の匂いぷんぷんだが、田崎潤に田中春男と、しっかり次郎長俳優も揃えている。
木暮実千代が、法印大五郎=田中春男から鬼吉=田崎潤に乗り換えようとして失敗するが、思いがけなくもっといいの=佐分利信が手に入ってめでたしめでたしというお話。メロドラマで、しかもマキノなのに、ロマンティックなところが全然ない。現代劇なので、木暮実千代がくるくるまわったりもしない。
そのかわり『お茶漬の味』よりもっとハイカラで、木暮実千代は名門の家の若奥様。一家は女学校を経営していて、彼女は「白百合夫人」と呼ばれる有名人で、若い女性の憧れの的である。学校の経営を建て直すため、御曹司をお金持ちの娘と結婚させようという謀略で、木暮実千代は追い出されてしまうのだが、白百合夫人を広告塔にして生徒を集めればよさそうなものだ。
夫である御曹司は田中春男で、妻に「この家の中でお母さまがいちばん好きでした」と言われてしまう気の毒な男。もっと笑える役を期待したが、いまひとつ精彩がなくて残念。田崎潤は木暮実千代の再従兄弟だが、なんと会社で「色魔」といわれているというすごい設定。佐分利信は遭難した山小屋でまわりに無関心を装いつつ、実はしっかり木暮実千代をチェックしていたというむっつりスケベの役。
雪山で遭難した佐分利信、木暮実千代、田崎潤の三人が、二日間ほとんど食べ物もなく過ごすところが、お昼前の空腹感とマッチしていた。