実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『香港の夜(香港之夜)』(千葉泰樹)[C1961-24]

同じく神保町シアターの特集「一年遅れの生誕百年 映画監督千葉泰樹」(公式)で、『香港の夜』を観る。9年ぶり二度め。主演の宝田明氏が観にいらっしゃっていて、上映前に簡単な挨拶があった。9年前の国際交流基金フォーラムでの上映時には大いに語っていただいたが、そのときに比べるとやはり老けられたようだ。

かつて日本が中国を侵略した事実をふまえ、国境を越えた恋愛に母ものの要素を加えたメロドラマ。日本と香港を舞台に、柳川や澳門など観光的な見どころやエキゾチックな要素も加え、なかなかよくできた映画だと思う。なにより、宝田明、尤敏(ユーミン)、司葉子の3人が美しすぎる(ただし司葉子の歯が気になった。いつもあんなんだっけ?)。まさにスターのオーラを漂わせており、とにかくゴージャスでまぶしい。

ファッションも、尤敏のチャイナドレスをはじめとして、豪華にとっかえひっかえしていてうっとりする。わたしなら立つこともままならないような高いピンヒールの靴で、いろんなところを闊歩するのにも目が釘付け。バシッと入ったアイラインも、アイラインを引けない女としては「がんばろう」という気にさせられる。宝田明のスーツ姿もとってもスマート。

悪者が登場して、あからさまに邪魔されたりいじめられたり対立が起きたりするのではなく、もっと微妙で繊細な感情がきめ細やかに描かれている。宝田明と尤敏とのあいだには、明らかな障害はないにもかかわらず、ふたりはなかなか結ばれない。尤敏と木暮実千代の母娘も、夫の加東大介の理解もあり、和解してお互いに思いあっているにもかかわらず、やっぱり一緒に暮らしていけない。また、最初は宝田明をはさんでライバル意識をむき出しにしていた尤敏と司葉子が、やがて友情で結ばれていくのもいい。ラストにこのふたりのシーンをもってきたことからも、単なる恋愛ものというより、国境を越えて人と人とが理解しあうということについて、真摯に取り組んだ映画という印象を受ける。

また、前にも書いたように、移動のたびに律儀に映るパンナム機に感動。ファーストシーンからいきなりだし、毎回しっかり‘PAN AM’の文字までくっきり。協賛企業の意向に対しても、真摯に取り組んだ映画。Wikipediaの「パンアメリカン航空」のページ(LINK)を見ると、「パンナムが登場する映画・テレビドラマ」としてクレイジーキャッツものや若大将ものが挙っているので、東宝とは密接な関係にあったのだろう。