実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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[映画]『同じ月を見ている』

東京フィルメックス最終日の今日は、鑑賞予定は一本だけ。その前に、深作健太監督の『同じ月を見ている』を観に行く。

私は深作欣二作品が大好きだ。親子ですごい俳優はいても、親子ですごい映画監督は滅多にいない。だから深作の息子だからといって特に興味はなかった。ところが、先日突然気づいた。深作の息子だということは中原早苗の息子だということに。急に興味がわいてきた。これがこの映画を観た理由である。中原早苗の息子だったらなんだと聞かれると困るが、とりあえず個性的な監督であることを期待した。しかし、ごくふつうの映画だった。やたらとキャメラがパンしたりアップになったりしてじっくり見せるところもなく、画としていいと思うところもない。

原作については全く知らないが、主役の三人をはじめとして、人物設定が図式的すぎる。いかにも、「こういう物語を語るためにこういう設定にしました」という感じ。頭ではよくわかるが、それが説得力をもつためには、人物が生身の存在感をもち、設定を越えて人物自体が動いていくようなパワーが必要だ。残念ながら、そういったものを感じることはできなかった。しかも人物の背景や心情が、かなりの部分、台詞で説明されてしまっている。映像で説明しているのに、不要な台詞を入れて台なしにしているところもあった。

この映画に泣かされたという人が多いようだが、正直言ってどこが泣きどころなのかわからなかった。次からは、深作の息子だというだけでは観ないだろう。これだって陳冠希(エディソン・チャン)が出てなかったら観なかったかもしれないけれど(別にファンではないが)。