実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『真紅な海が呼んでるぜ』(松尾昭典)[C1965-39]

朝からラピュタ阿佐ヶ谷へ。中原早苗特集で『真紅な海が呼んでるぜ』(goo映画)を観る。またどうでもいい日活アクションを観た、という感じだが、「ダンサー役・中原早苗がセクシーな衣装で歌や踊りも披露する」(チラシより)というのが目当てだったので、それを堪能しただけでよしとする(顔がおばさんになりかけなのが気になるが)。

舞台は神戸。海の中で誤って友人を殺してしまった弟。その友人の純情無垢な妹と、妖艶なダンサー。そのダンサーと瓜二つの別れた妻を忘れられない兄。その兄が働く小さな船会社を潰そうとしている大きな船会社。その大企業の名の陰で行われている密輸や売春…。お膳立ては揃いすぎるほど揃っている。なのにそれが全然うまくつながっておらず、なんだか弛緩した気の抜けた映画になってしまっている。

主人公(弟)を演じるのは「渡哲也(新人)」で、かなり青臭い。渡哲也にこういう真面目な役は全然似合わない。まわりもそのことに気づいて、『東京流れ者[C1966-10]→『紅の流れ星』[C1967-29]→『仁義の墓場[C1975-19]…となっていったのだと思われる。最近の渡哲也はよく知らないが、かなり違和感がある。また昔に戻ってキレた役をやってほしいものである。

妖艶なダンサーはもちろん中原早苗。「香港に売り飛ばされた」という60年代っぽい、めちゃくちゃ懐かしい設定。二谷英明演じる兄の元妻と二役だが、この元妻がもっと物語に絡んできてほしいし(悪徳船会社社長、金子信雄の愛人になっているとか)、友人の妹、松原智恵子の絡み具合も中途半端。二谷英明と社長の菅井一郎が最後までいい人なのもヘン。どちらかが裏切って、「やはりそうきたか」と観客を楽しませてくれないと困る。