実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『でんきくらげ』(増村保造)[C1970-23]

神保町シアターの特集「監督と女優とエロスの風景」(公式)で、増村保造監督の『でんきくらげ』を観る。

でんきくらげ [DVD]

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肉体を武器にしたたかに生きる女性の話ということで、もう少しすごいのかと思っていたら案外ふつうだった。全体としては、女性の自立を描いた映画という感じ。

これは何をおいてもまずヒロインの魅力と存在感によって成立する映画だと思うが、ヒロインの由美を演じる渥美マリの魅力がよくわからない。ちょっとエキゾチックな感じだけど、すごくきれいというわけでもないし、個性的というわけでもない。肉体も、スタイルはいいと思うが、それを特に強調して見せているようでもない。脱ぐと、全く乳首を見せていないわけではないのに、やたらと胸を隠すという意味不明な行為が不自然で、いいカラダかどうかもよくわからない。また、けっこう頭のいい女性だと思うのに、台詞が棒読みのせいかバカに見える。とにかく、どーんという存在感が感じられない。

またルックス以上に、ヒロインはオリジナルで強烈な価値観を提示し、それにしたがって行動してもらいたい。ところが、このヒロインはものすごくまっとうな女性なのである。嫌な男と寝たり妾になったりするのはお金がほしいからであり、それも自分ではなく母親のためである。母親を大切にしており、性格もいい。本当に好きな男は一人で、好きな男には妥協を許さない。ほとんどどこにも意外性というものがない。要するにこれは、男性の願望の具現化である。清純で貞淑であってほしいけれど、スクリーンではハダカやエッチシーンも見たいし、ポーカーに勝てば自分にも手が届く存在であってほしいというような。

ヒロインが好きな男がクラブのマネージャーの川津祐介だが、増村作品の川津祐介って存在がギャグみたいなのが多いと思っていたけれど、これはかなりまともだった。