実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『妻は告白する』(増村保造)[C1961-12]

遅めに出京して阿佐ヶ谷へ。サンマルクカフェで昼ごはんを食べてから、ラピュタ阿佐ヶ谷(公式)の「悪女礼讃〜スクリーンの妖花たち」(公式)特集で、増村保造監督の『妻は告白する』を観る。

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この映画は18年ぶり二度め。前回観たときの感想はよく憶えていないが、当時はまだ若尾文子の魅力にめざめていなかったので、彼女が演じるヒロインに辟易したんだと思う。夫の小沢栄太郎がひどい男なので、計算のうえで冷静にザイルを切ったのなら共感するが、川口浩しか目に入らず、捨てられたらすがり、拒絶されたら自殺するというのには共感できなかったのだ。

しかし今回は、くねくねで流し目の若尾ちゃんを堪能した。若尾ちゃんはクールでドライというイメージだったので、『千羽鶴[C1969-20]で始終湿った吐息を吐きながらくねくねしていたのが新鮮で強烈だった。しかし、その原形はこの『妻は告白する』にあったのだ。裁判のシーンで、何かあるごとに川口浩に伏し目がちな流し目を送る若尾ちゃん。雨の中、川口浩の会社を訪ねるラストシーンの、川口浩しか見えていないずぶ濡れの若尾ちゃん。この若尾ちゃんを記憶していれば、『千羽鶴』の彼女の役がその焼き直しみたいに見えてしまうのも無理はないかもしれない。雨の日の陰鬱な空気が印象的な点も似ている。とはいえ、わたしは『千羽鶴』の若尾ちゃんのほうがもっと好きだけれど。

ところで、くねくねで流し目といえば金姸兒(キム・ヨナ)である。フィギュアスケートには特に興味はないが、彼女には若尾ちゃんをめざして今後とも精進してもらいたいものだ。