実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『母を讃へる歌』(原研吉)[C1939-S]

フィルムセンターの特集「再映:よみがえる日本映画/生誕百年 映画監督 吉村公三郎」(公式)で、原研吉監督の中篇、『母を讃へる歌』を観る。『なつかしの顔』の併映。

脚本・野田高梧、撮影・厚田雄春、父・斎藤達雄、母・吉川満子、長女・三宅邦子、長男・三井秀男。「だれの映画だよ」ってクレジットを見ながらつぶやく。いや、だから原研吉の映画です。

三井秀男の子供時代が爆弾小僧なのが小津映画とは違うところだけど、なんで爆弾小僧が三井秀男になるねん。突貫小僧ならまだしも、爆弾小僧はあり得ないでしょう。爆弾小僧が三井秀男になるなんて、これほどの親不孝はありません。しかも三井秀男、まだ高等学校の学生の役。老けた高校生ですねえ。与太者にしか見えません。ついでにいうと、三宅邦子も未婚の娘には見えません。

内容はというと、子供たちが小さいときに父親が突然亡くなり、母親が苦労して子供たちを育てるけれど、いろいろあって親子がもめて、最後は仲直りするというお話。繰り返すが、母・吉川満子、息子・三井秀男。え、それって『母を恋はずや』[C1934-06]じゃないの? タイトルも似ているし、旧かなづかいが入っているところも同じ。

違うのは、吉川満子が保険の外交員としてバリバリ働いて家計を支えてきたが、男性の同僚に妬まれて退職に追い込まれるところ。重役に抜擢されでもしたのなら妬むのもわかるけれど、営業成績がいいという事実だけでキレるおっさんはこわい。しかもふだんは女だけの家に酔っぱらって押しかけ、無理やり上がりこむ。

ところで、高等学校の寮のシーンで羊羹が出てきた。「羊羹といえば成田三樹夫だよなあ」と思いながら観ていたら、無性に羊羹が食べたくなった。和菓子のなかでは羊羹はあまり好きなほうではないのだけれど。