実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『天と地の間に(Antara Bumi dan Langit/Frieda)』(Dr. Huyung)[C1951-20]

シネマート六本木へ移動。今回、六本木ヒルズ以外で観るのはこのプログラムのみ。三つの名前をもつ朝鮮人映画監督、許泳(ホ・ヨン)の代表作の上映である。

まず最初に、日夏英太郎の名で朝鮮総督府で撮った国策映画、『君と僕』[C1941-S]が上映される。『君と僕』と聞いたらゲイ映画としか思われないが、そうではなくて朝鮮人志願兵の話のようだ。残念ながら24分の断片しか見つかっていないので、内容はよくわからない。三宅邦子李香蘭が出ていた。

続いて、戦後Dr. Huyung(ドクトル・フユン)の名でインドネシアで撮った『天と地の間に』。インドネシア人の少年と、オランダ人との混血の少女が大人になって再会する、という話なので、また『永遠の天』風の話かと思ったが、そんなロマンチックな展開にはならなかった。インドネシア独立直後につくられた啓蒙的な映画だと思われ、人物の性格づけが単純で役割がはっきりしすぎているため、後半はちょっと退屈だった。冒頭の、凧が木に引っかかるシーンなどはなかなか印象的だったのだが。

当時まだインドネシア語がそれほど普及していなかったためと思われるが、台詞がかなりゆっくりで(このあたりは戦前の中国映画の普通話と同様)、けっこう聞き取れるところがあってびっくりした。

上映後、監督の長女の中西萠子さんと、シネカノン李鳳宇氏をゲストにトークショーがあった。中西さんは、日夏もえ子の名で[越境の映画監督 日夏英太郎【許泳 フユン(Dr.Huyung)】 3つの名前を持つ映画監督「日夏英太郎」の一考察](LINK)というサイトを運営しておられる。