フィルムセンターの特集「シネマの冒険 闇と音楽 2011」(公式)で、カール・Th. ドライヤー監督の『裁かるゝジャンヌ』を観る。はづかしながら初ドライヤー。
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2005/08/27
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なんといっても、ジャンヌ・ダルクに馴染みがない。おそらくフランス人にとっては、よく知っていて当然共感すべき人物なのだろう。しかし、わたしにとっては(たぶん多くの日本人も)、ストーリーをよく知らずに忠臣蔵映画を観るようなものである。映画の最初に、親切にもストーリーの説明があるので、歴史的背景などをよく知らなくてもお話はわかる。しかし、はじめから共感をもちあわせているかどうかがキーなのだと思う。なぜなら、客観的にみれば、ジャンヌ・ダルクの物語の柱になっているのは、信仰とナショナリズムというわたしの二大苦手テーマであるからだ。「イエスさま」と叫んで死ぬことは、「天皇陛下万歳」と叫んで死ぬのと同様の犬死に感を感じさせる。
そんなわけで、特に共感するでもなく、恐怖と絶望のなかに憑かれたような信仰の喜びを垣間見せるジャンヌを見ていたら、ある女優を連想した。ほかでもない、芦川いづみである。いづみさま主演のジャンヌ・ダルク、ぜひ観てみたかった。ジャンヌは19歳と言っていたが、シンデな19歳のいづみさまにはまだ無理なので、もうちょっとあとのいづみさまでお願いしたい。当時の日活には、そんなナイスな企画を思いつく、目の利く人物はいなかったのか。
裁判の途中で「拷問の用意をしろ」とか言いだしたので、「おお、実は拷問映画だったのか」と思ってワクワクしたが、拷問器具のアップをさんざん見せただけで終わった。まあ、拷問映画にするにはジャンヌがもっと美少女じゃないとね。その点から言ってもいづみさまはうってつけなのだが。今まで考えたこともなかったが、ヨーロッパには、ジャンヌ・ダルクが拷問を受けるSMポルノ映画とかあるのだろうか。石井輝男に撮ってもらいたかった気がする。不謹慎ですみません。
勝手なことを書いたが、もちろん、ジャンヌの顔のアップのもつ力強さとか、ジャンヌと燃えさかる火を交互に見せて火あぶりを表現するところとか、1928年のサイレント映画の映像表現のすごさは堪能した。
ところで、鳴っているのが自分のおなかなのか他人のおなかなのかということは、案外わからないものである。