シネマスクエアとうきゅうで、陳徳森(テディ・チャン)監督の『孫文の義士団』(公式)を観る。1906年の香港を舞台に、同志との密談のため香港を訪れた孫文を、暗殺者たちから守ろうとする男たちの物語。
冒頭から張學友(ジャッキー・チョン)がちょこっと顔を出すところからも明らかなように、とにかく豪華なキャストを楽しむための映画。そのなかで印象に残るのは、梁家輝(レオン・カーフェイ)、胡軍(フー・ジュン)、王學圻(ワン・シュエチー)といった、ちょっと渋めの方々。あまり活躍はしないが、任達華(サイモン・ヤム)が出ているのもうれしいところ。それから台湾から唯一参加の王柏傑(ワン・ポーチエ)。『九月に降る風』[C2008-06]で90年代の青年を演じた彼は、『ジュリエット』[C2010-08]では70年代の青年を、本作では20世紀初頭の青年を演じていて、ちょっとレトロな雰囲気をもっているということだろうか。今後が楽しみだが、こんな合作映画や香港映画なんかに出ていないで、台湾映画でがんばってほしいと思う。
内容は、正直言ってそんなにおもしろくない。孫文を中心とする歴史上の物語に、彼をとりまく人たちの親子関係、夫婦関係、師弟関係といった個人的な関係やそのあいだの感情を絡めようとしたのはおもしろいと思う。しかし、10数人程度の主要登場人物が過剰にドラマチックにつながっていて、松竹メロドラマもびっくりである。そしてその人間関係の描き方が情緒的すぎる。
アクション映画としては、まず、孫文という近代的なイメージと、清朝が放った500人の暗殺団という前近代的なイメージがいかにもミスマッチで興味を減退させる。また、ドラマと切り離してアクションを楽しむタイプの話でもないので、ドラマに乗れないとアクションもそれほど楽しめない。そのせいかいちおう主役扱いの甄子丹(ドニー・イェン)も、いまひとつ精彩を欠くように思われた。