実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『少年たち(Petits Frères)』(Jacques Doillon)[C1998-44]

予定が合わなかったり、内容が好みじゃなかったりして、ずっとごぶさただったフィルムセンターの今度の特集は「現代フランス映画の肖像」(公式)。今回もまあいいか、と思ったが、プログラムを見るといくつかおもしろそうなものもあるので、行けるところは行っておこうと思う。今日はジャック・ドワイヨン監督の『少年たち』。

パリ郊外の移民が多く住む地区を舞台に、13歳くらいの少年少女たちを描いたもの。ヒロインはユダヤ系の少女、タリア。彼女と彼女が連れている犬に群がる少年たちはアラブ系やアフリカ系。彼らは、親に棄てられたりあまり顧みられなかったりするかわいそうな子供たちであり、お互いに助け合ったり、兄弟に面倒をみてもらったりしながらなんとか暮らしている。しかしやっていることは窃盗などでほとんど犯罪者であり、それ自体は生きるためにしかたがないとしても、他人のものを盗ってお金に替えたりすることに対する安易さ、良心のなさにはゾッとするものがある。一方で、まだまだ子供らしい、無邪気な面もたくさんもっている。タリアはそんな少年たちに犬を盗まれたりしながらも仲良くなっていく。自身も犯罪に手を染めつつも、友人に乱暴した義父を警察に訴える強さももち、自分の身のふりかたを自分で決めていく。

子供たちをかわいそうなものとして描くのでも、センセーショナルに描くのでもなく、矛盾に満ちた彼らを等身大に描いていて、さわやかな後味が残る映画である。

タリアを演じるステファニー・トゥリーがいい。美人とはいえないが、強気で意志的で、媚びない感じがかっこいい。少年たちに「ボクザーの目だ」と言われ、タイソンと呼ばれるのも頷ける。しかしこの映画あとそんなに活躍してはいないようだ。タリアが飼っている犬のキムもかわいかった。

全体としてなかなかいいのだけれど、だからといってすごく気に入ったわけでもないのだが、もしこれが同じような内容で同じようなスタイルの、台湾映画やマレーシア映画だったとしたら、おそらくかなり気に入っていただろうと思う。「そういうのって変かな?」と自問してみる。いや、変じゃないと思う。