実録 亞細亞とキネマと旅鴉

サイトやFlickrの更新情報、映画や本の感想(ネタばれあり)、日記(Twitter/Instagramまとめ)などを書いています。

『台北カフェ・ストーリー(第36個故事)』(蕭雅全)[C2010-17]

東京国際映画祭12本めは、同じくシネマート六本木で蕭雅全(シアオ・ヤーチュアン)監督の『台北カフェ・ストーリー』(TIFF紹介ページ/公式(海外))。アジアの風・【台湾電影ルネッサンス2010〜美麗新世代】の一本。桂綸鎂(グイ・ルンメイ)、林辰唏(リン・チェンシー)が演じる姉妹が開いたカフェ、朶兒咖啡館を舞台にした物語。

邦題からしてちょっとヤバいなと思ったが、桂綸鎂は好きなので、なるべく先入観をもたないで観るよう心がける。監製が侯孝賢(ホウ・シャオシェン)だったので、なおさらそのように心がける。思ったとおり、最近ありがちな、きれいでちょっとおしゃれでかわいらしい映画だが、だんだんそのかわいらしさというかメルヘンっぽさがわたしの許容範囲をおびやかしていく。そして、白ルンメイと黒ルンメイが出てきて会話するあたりで許容範囲を大きく超えてしまった。

それに、正直いってストーリーがあまりおもしろくない。物々交換するカフェで、途中から物の代わりにお話と交換したりするのだが、このお話がつまらない。特に、薔兒が捏造した姉妹の生い立ちの話。「つまらんなー」と思って聞いていたら、「もう一回最初から話すわね」とか言ってまた話しはじめたので、殴ってやろうかと思った。

メッセージがかなり前面に出た映画だが、そのメッセージはあたりまえかつ抽象的で、あまり心を動かされない。登場人物が何かを選択をしたときに、「あなたならどちらを選びますか?」という街頭インタビューが挿入されたりもするが、質問がはっきりいって「そんなのどっちだっていいじゃん」というものなので、見ていてあまりおもしろくない。

ほかに気になったのは、薔兒(林辰唏)がカフェや雑貨屋さんにチラシを配るシーン。出てくるお店がみんなきれいでおしゃれ。それらはたぶん実在のお店だと思うし、こういうお店が集まっているエリアは台北市内にいくつか存在する。でもやはり、台北ってこんな街じゃないよね、と思う。もっと汚くて、もっと魅力的な街だと。

姉妹と母親が三人並んで甜品を食べたりシャンプーしたりしているのはけっこうおもしろかった(ちょっとしつこいけれど)。

音楽はけっこうよくて、特に“她的改變”という曲がよかったが、出だしが“The Shadow of Your Smile”にそっくりなのが気になる。また、この映画はパンダ映画かもしれない。カウンターの中あたりで、後ろ姿のたれぱんだ二枚重ね(ぬいぐるみか置物)を見たような気がするが、はっきりとは確認できなかった(情報をお持ちの方はお知らせいただけるとうれしいです)。

上映後、蕭雅全監督をゲストにQ&Aが行われたが、夜遅いのでパスした。ほかに三人組の男性が終了後すぐに出てきたが、以下、彼らの会話。「Q&Aでひとつだけ聞きたかったですねえ。「中くん(←ゲスト出演していた中孝介)の演技、あれでよかったんですか?」って」「それ、関係者だってバレバレじゃん」。あんまりあれでよくはなかったと思います。このシーンもけっこう苦痛だったな、そういえば。

10月25日に行われたQ&Aのレポートはこちら(LINK)。動画はこちら(LINK)。監督のインタビューはこちら(LINK)。