10時に伊勢丹会館へ前売りを買いに行ってから新宿武蔵野館へ。整理券をもらい、セガフレードでマキアートをひっかけてから、周杰倫(ジェイ・チョウ)の『言えない秘密』を観る(公式/映画生活/goo映画)。ちなみにわたしは周杰倫のファンではない。
世間ではネタバレしちゃいけない映画と認識されているようなのでいちおう書いておくが、以下にはネタバレがあるかもしれないので、困る人は読まないでください。ただし、ふつうに観ていればだいたい予想がつくし、その前に予告篇を観ればすぐわかるので、あまり気にする必要はないと思う。
以下、感想を断片的に。
- 劇中、「妄想」というキーワードが出てくるが、これは周杰倫の妄想を映画化したものに違いない。妄想というか、まあ「こんなことがあったらいいなあ」といったもの。なので奥行きがない。読んだことがないからわからないけれど、ケータイ小説というのはきっとこういうものなんだろうと、映画を観ていて思った。
- 李屏賓(リー・ピンビン)のむだづかい。こんなふつうの映画みたいに撮るなら、別に李屏賓はいらない。そりゃたしかに画はきれいだけれど、単にきれいなだけなら李屏賓はもったいない。
- 台湾の歴史や社会が全く感じられない映画。最近はそういう映画も珍しくないし、ものによっては別にそれでも構わない。しかし、せっかくふたつの時代が出てくるのだから、そこに時代背景なり社会背景なりが感じられないのは惜しいと思う。1979年といえば美麗島事件の年だし(映画の時点ではまだ起こっていないが)、時代が落とす影がもう少しあってもいいのではないだろうか。
- 路小雨(桂綸鎂)がタイムトラベルするきっかけが、偶然見つけた楽譜だというのもちょっと単純すぎる。ロケ地である私立淡江高級中學は、100年以上の伝統のあるキリスト教系の学校なので、そういうところから何か因縁をもってきたり、小雨が選ばれる必然性を与えたりしてもよかったと思う。
- ロケ地は淡水(それ以外でもけっこう撮られているようだが)。『星のフラメンコ』[C1966-V]や『少年』につづく淡水映画の誕生はうれしい。主な舞台は、上述したように私立淡江高級中學。『ファースト・デート 夏草の少女』[C1989-46]で建國中學に見立てられていたほか、『窓の外(窗外)』[C172-16]など多くの映画、ドラマ、MVで使われているところだ。クレジットには眞理大學などもあったので、あのあたりの古い建物がいくつか使われているのかもしれない。小雨の家の正面に觀音山が見えたのもうれしかった。
- 周杰倫はミュージシャンだから、音楽くらいは合格点をあげたいところだが、残念ながらあげられない。この映画は、ピアノで演奏する曲やCDで聴く曲など、劇中で実際に鳴る音楽がたくさんある。それぞれの曲も悪くない。だからいわゆる映画音楽は最小限でいい。それなのに、やたらと音楽が垂れ流されている。せっかくいい曲が使われていても、印象がうすれてしまっていて残念。ちなみに“情人的眼涙”は、探してみたらうちにあった。映画は姚蘇蓉版のようだが、うちにあるのは潘秀瓊版。
- キャストについて。主演のふたりが具体的にどうこうと言う前に、ふたりとも高校生を演じるには年をとりすぎ。クラシックでおしゃれな制服とも相俟って、「なんちゃって高校生かコスプレか」という雰囲気を醸し出している。高校生の未熟さとかぎこちなさとか初々しさが感じられないので、切なさとか甘酸っぱさといったものもいまひとつ伝わってこない。ヒロインに桂綸鎂(グイ・ルンメイ)を据えた点は、やはり「秘密」がキーワードだった『藍色夏恋』[C2002-03]を連想させ、気が利いていると思う。
- ナチュラルな魅力で知られる桂綸鎂を、あえて思いっきりアイドルっぽく撮ったところがこの映画の新しいところである。桂綸鎂はもともと好きだし、かなり魅力的に撮られていた。しかしなんちゃって女子高生のせいか、やはり少しわざとらしい。結局のところ、やはり彼女は自然体で撮ったほうがいいと思う。
- もうひとつ新鮮だったのは、3ヶ月後に季節が変わって、冬の制服から夏の制服になったこと。台湾は、日本人が想像するよりは四季がある(というか冬が寒い)が、映画やドラマでは、いつも夏服を着ていて季節がわからなかったり、季節の変化が服装で示されるケースというのは稀である。でもこの映画では雪が降っていたみたいだし、実は台湾じゃないのかも。
新宿に新しくオープンした無印良品のMealMUJIで昼ごはん。有楽町とおおむね同じだが、おかずの選び方やプレートの種類に少し違いがあった。