実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『文雀(文雀)』(杜琪峰)[C2008-14]

フィルメックスに行くため17時前に会社を出る。いつものMeal MUJIで晩ごはんを食べていると、J先生から「ヘンな会議につかまって出られない」とのメール。結局抜け出したようだが、晩ごはんを食べる時間はなかったらしい。お気の毒さまっ♪ でも映画中におなかを鳴らさないでください。

観たのは杜琪峰(ジョニー・トー)監督の『文雀』。主演が任達華(サイモン・ヤム)なのがうれしい。この映画での彼は、『SPL/狼よ静かに死ね』[C2005-32]ほどかっこよくはないが、『アイ・イン・ザ・スカイ』[C2007-16]ほどかっこ悪くもなく、冒頭の、とっても楽しそうに裁縫をしているショットから目を奪われる。香港の街を自転車で楽しげに走るのもほほえましい。

香港の街がたくさん出てきて、特にわたしの好きな上環あたりで撮られているのもうれしい。西港城(Western Market)などの近代建築や古びたビル、石段などがじゃんじゃん映る。任達華たちが毎朝茶餐廳に集まって、早餐Aを食べたりするのもナイスだ。わたしの好きなインスタントラーメンの定食は、たいていC餐かD餐なのだが。

一発アイデア勝負という感じではあるが、スリの活劇というちょいと変わったところに目をつけた本作は、初めて観るぶんにはたいへん楽しんで観た。しかしながら、すごく気に入ったか、もう一度観たいかと問われるとそうでもない。その理由は林熙蕾(ケリー・リン)である。この映画は、任達華をはじめとする4人の男性が、謎の美女、林熙蕾を助けるというお話なので、このヒロインがキーにある。要するに、この女性を助けてあげたいと思うかどうかということだが、わたしはこんな女助けたくありません。

林熙蕾は、『父子』[C2006-14]では豊満で野性的で悪くなかった。しかし今回は、なんだかえらく痩せていて、それがかっこいいというより痛々しい。胸が下がっているように見えるのも気になる。カネに糸目をつけない生活を送っているという設定だからやむを得ないかもしれないが、高級そうでエレガントな、老けてみえるファッションも好みではない。ハイヒールでドタドタ走るのもかっこ悪い。しかしいちばん問題なのはしゃべりかただ。あれ、吹き替えですよね? 大陸風普通話をしゃべらせたかったのだろうが、あれがすべてを台無しにしている。あのリアリティのない吹き替えしゃべりで安っぽい身の上話を語られても、信用もできないし、ぜんぜん同情する気になれない。

おしゃれで軽快な音楽は、最初は耳を惹いたものの、のべつまくなしに音楽がついていてうんざりした。いろんな面であざとさが目につくのも気になるところである。とはいえ、やっぱりロケ地が魅力的なので、そのうちDVDを買うことになるだろう。