実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『破戒と男色の仏教史』(松尾剛次)[B1320]

『破戒と男色の仏教史』読了。

破戒と男色の仏教史 (平凡社新書)

破戒と男色の仏教史 (平凡社新書)

仏教の戒律をテーマに、僧侶の持戒と破戒の状況と、それに対する戒律復興運動を、古代から明治以降までたどった本。タイトルにつられて買ったものの、仏教史には特に興味がないのでどうかと思ったが、けっこうおもしろく読めた。

記述の中心になっているのは、鎌倉時代の破戒状況とそれに対する戒律復興運動。破戒状況については、東大寺の僧、宗性が書いた「禁断悪事勤修善根誓状」(悪事を禁断し、善根に努めることを誓った文書)がいくつか引用されており、この内容がかなりすごいので、特にすごい部分を引用しておく(現代語訳)。

二、現在までで、九五人である。
 男を犯すこと百人以上は、淫欲を行なうべきでないこと。(p. 75)

これは36歳のときに書いたものだそうだが、僧侶だろうが俗人だろうが、位が高かろうが低かろうが、同性であろうが異性であろうが、100人はかなり多いと思う。

『月は上りぬ』[C1955-12]にちょっとだけ出てくる東大寺戒壇院(LINK参照)がどういうところかがわかったのと、鎌倉の極楽寺が戒律復興運動の重要な拠点であったことがわかったのも興味深かった。

最後に著者は、今から戒律復興をすべきと主張しているが、わたしもそう思う。