実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『ムアラフ - 改心(Muallaf)』(Yasmin Ahmad)[C2007-39]

4本めは、アジアの風のマレーシア映画、『ムアラフ - 改心』。ヤスミン・アハマド監督の今のところの最新作だが、去年選ばれなかったからもうないかと思っていたら、なぜか今年のプログラムに入っていた。ヤスミン・アハマド監督の映画も、まだ日本では正式に公開されていないが、わたしは全部観ていることになる。

民族や宗教、宗派の対立といった大きなテーマを、大上段に構えるのではなく、個人と個人の日常的な問題として描く、というのがヤスミン・アハマドの映画である。自伝シリーズが前作『ムクシン』[C2006-18]で終了したあとの本作は、まさしくそういう映画。加えて、自伝シリーズでは両親の愛情に非常に恵まれているのが印象的だが、今回は一転して親からの虐待とそれに対する許しがひとつのテーマとなっている。

主人公は、マレー人の姉妹と華人の青年。これまでの映画にほとんど主演しているシャリファ・アマニと妹のシャリファ・アリシャが、マレー人姉妹アニとアナとして出演している(【18-10-2009修正】妹は『ムクシン』のシャリファ・アリヤナだと思っていたら違っていました)。また、華人青年ブライアン(ブライアン・ヤップ)のお母さん役は、『細い目』[C2004-32]のジェイソンのお母さん。パブでのアニの同僚が、『881 歌え!パパイヤ』[C2007-31]の大木瓜、楊雁雁(ヤオ・ヤンヤン)だということに気づかなかったのは一生の不覚である。姉妹の継母がニン・バイズーラだというのもあとで知った。

テーマは重いが、これまでどおり随所にユーモアをちりばめて描かれていて楽しく観られる。イスラム教のみならず、宗教にやたらと詳しい姉妹とか、人間関係には臆病で、金には細かいブライアンとか、人物造型もユニークで楽しい。ちなみに、尼僧好きの人は必見の映画である。

舞台は今回もイポー。言語的には、姉妹もブライアンも英語を日常的に使っていて、あまり面白味がなかった。ムスリムなのにカトリックの学校に通っている、というのはよくわからなかった。ふつうにあることなのだろうか。